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防衛強化へ「重要な場所」 日鉄呉跡地 国、市議会に説明

 防衛省は11日、呉市の日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区跡地における「多機能な複合防衛拠点」構想について同市議会の議会協議会(全員協議会)で説明し、跡地が太平洋や南西諸島へのアクセスが良い「非常に重要な場所」と強調した。取材に対して、陸上自衛隊の訓練場として活用する可能性に言及するなど、幅広く防衛力の強化に役立てたい考えを示した。(小林旦地)

 防衛省地方協力局の村井勝総務課長たち3人が出席した。想定する機能として、民間誘致を含む装備品などの維持整備・製造基盤▽防災拠点や艦艇の配備、訓練場などの部隊活動基盤▽岸壁などを活用した港湾―の3点をあらためて挙げた。

 今後のスケジュールや構想の具体的な内容について聞かれた村井課長は「機能に合わせたゾーニングをできるだけ早く仕上げたい」とするにとどめた。市のメリットを問う質問には「地元経済にとっていいことだと思える内容にするため努力する」と強調した。

 協議会後に報道陣の取材に応じた村井課長は「海田市駐屯地(広島県海田町)の部隊が活用する可能性がある」と話した。訓練場は陸自の活用を想定しているという。一方、弾薬庫については「一般的な基地と同様に火薬庫の整備も検討対象になっている」とした上で、多機能な拠点とするため、メインの施設にはならないと示唆した。

 議会協議会に出席した新原芳明市長は「これからいろいろな面で考えていく」とし、構想について自身の立場を明言しなかった。

反対団体 設立へ準備会 市民ら

 防衛省による日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区跡地(呉市)での複合防衛拠点構想に反対する市民たちが11日、呉市内で新団体設立の準備会を開いた。「平和的な港湾都市建設を目指す旧軍港市転換法(軍転法)の理念に反する」とし、構想の白紙撤回を求める。4月7日に設立総会を開く。

 既存の市民団体メンバーたち約20人が参加。団体名は「日鉄呉跡地問題を考える会」とし、ニュース発行や署名活動などを中心に活動すると申し合わせた。

 実行委員で市民団体「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動 呉地域協議会」共同代表の伊藤英敏さん(80)は「防衛拠点構想への賛成意見が大勢の市議会に失望した。目先の経済より市民の命、と訴えていく」と強調。この日は市役所前で抗議活動を展開するとともに、新原芳明市長に構想を拒否するよう申し入れた。(栾暁雨)

(2024年3月12日朝刊掲載)

[イチからわかる] 「多機能な複合防衛拠点」 どうなる? 整備急ぐ国 広島県・呉市は経済活性化重視

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