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[イチからわかる] 「多機能な複合防衛拠点」 どうなる? 整備急ぐ国 広島県・呉市は経済活性化重視

 呉市の日本製鉄(日鉄)瀬戸内製鉄所呉地区跡地で大規模な防衛施設の整備案が浮上した。防衛省は「多機能な複合防衛拠点」としたい意向を4日に広島県と市に申し入れたのに続き、11日には市議会にも説明した。跡地を巡る経緯と活用に向けた今後の焦点をまとめた。(長久豪佑)

  Q そもそも跡地はどんな場所なの?

 A 戦艦大和を造った旧海軍工廠(こうしょう)を源流とする製鉄所で、長年地元経済を支えてきました。ただ、昨年9月に事実上閉鎖した後、広大な敷地の活用策は決まっていません。面積はマツダスタジアム36個分に当たる約130ヘクタール。建物などの解体が始まっていますが、約10年かかるとされています。

 Q 防衛省は何を整備するつもりなの?

 A 跡地を一括購入し、①民間誘致を含む装備品の維持整備や製造②ヘリポートなどの防災拠点と、艦艇の配備や訓練場といった部隊の活動拠点③岸壁を備えた港湾―の三つの機能を整備したいようです。火薬庫も想定しています。

 Q なぜ呉市に?

 A 「防衛力の抜本強化」を理由に挙げています。海に面した跡地そばには海上自衛隊呉基地があり、多くの艦船が配備されています。陸上自衛隊海田市駐屯地(広島県海田町)、海自と米軍が共同使用する岩国基地(岩国市)に近く、太平洋や南西諸島にも移動しやすい立地です。防衛上、地理的にとても重要な位置にあるのです。

 Q じゃあ跡地は防衛拠点になるわけ?

 A 木原稔防衛相は「速やかに整備を行いたい」としていますが、まだ正式に決まっていません。今後の焦点は所有者の日鉄側の意向です。同社は早期に敷地を有効活用したいとし「防衛省の意向は方針に合致している」としています。一方、これまで県や市との会議で「跡地活用は行政と連携しながら検討する」と説明しています。

 Q 地元自治体はどういうスタンスなの?

 A 防衛拠点の整備案について、あくまで県と市は「選択肢の一つ」との受け止めです。詳細が不明なため、まずは防衛省から話を聞く考えです。同省と日鉄を含む4者で協議する見通しですが、時期は未定です。これとは別に、県と市は4月、同省を除いた3者でも活用策を協議する場を新たに設ける予定です。

 Q 今後はどうなるんだろうか。

 A 県と市が重視するのは、活用策が地元経済の活性化や雇用創出につながるかという点です。県は2024年度、産業用地での利用を念頭に跡地のニーズや経済効果を調べ、複数の活用策を日鉄側に提案する考えです。長期にわたり跡地の塩漬けが続けば、まちの活力低下にもつながりかねず、調査にはスピード感も求められます。

(2024年3月12日朝刊掲載)

防衛強化へ「重要な場所」 日鉄呉跡地 国、市議会に説明

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