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「移設前に戻ったよう」 岩国基地騒音 周辺住民が懸念

 米軍岩国基地(岩国市)周辺で騒音の増加傾向が続いている。国は騒音軽減などを目的に滑走路を1キロ沖合に移したが、2023年度の測定回数は移設前の08、09年度を上回った。基地周辺の住民は懸念を強める。

 「沖合移設で騒音は少し軽減されていたが、移設前のうるささに戻ったように感じる」。滑走路の2・5キロ西の川下地区で暮らす自治会長の野上悦生さん(73)は受け止める。防音工事を施した自宅で、テレビの音量を上げないと聞こえない時がある。

 10年度に滑走路が沖合に移ったものの、18年までに約60機の空母艦載機が岩国基地に移り、騒音は大幅に増えた。近年は他の基地から空軍戦闘機の飛来が相次いでいる。

 基地の機能強化に反対する市民団体「瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク」の久米慶典事務局長(68)は、中国と米国の緊張の高まりが岩国基地の活発な動きの背景にあるとみる。「岩国の重要度が増し、市民の安心安全が脅かされている」と危ぶむ。

 騒音を巡り、基地周辺の住民が航空機の飛行差し止めなどを国に求めた第2次爆音訴訟の審理も続く。艦載機の移転で所属機が約120機に倍増した影響などを主張する。原告団の吉岡光則事務局長(78)は「爆音の被害が改めて数字で証明された」と語気を強めた。

 在日米海軍は24年、岩国基地の艦載機の空母を交代させる。艦載機がどう運用されるのかは見通せない。市の石本英二・基地政策担当部長は「騒音の増加は市民生活への影響が懸念される。基地の騒音は艦載機の運用に左右され、状況を注視していく」と話す。(川村奈菜)

(2024年4月5日朝刊掲載)

岩国基地騒音3万回超 23年度 沖合移設後最多

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