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連載・特集

在外被爆者 願いは海を超えて アンケート 届かぬ痛み切々 健康や生活不安根強く

 在外被爆者の願いとは―。中国新聞社が試みたアンケートで、世界七カ国に暮らす被爆者三百十二人は積年の思いをつづった。国の奨励で移民したブラジルの被爆者は「私たちも同じ日本人。見捨てないで」としたため、戦前は日本人として働いた韓国の被爆者は「どうして差別するのか」と訴えた。A4判の三枚の用紙に欄外までぎっしりと書き込んだ人も多かった。寄せられたメッセージを紹介する。(コメントは敬称略)

 日本国内と同様、在外被爆者も高齢化が進む。健康状態についての設問には、「悪い」が七十八人(25.0%)、「やや悪い」が百六人(34.0%)を占めた。合わせて六割近くが自身の健康に不安を抱えている。  医療機関への受診状況も、「通院している」が百八十二人(58.3%)と過半数を超えた。健康不安の自覚と完全に重複するわけではないが、ほぼ同数となった。

 また、北米や南米には二年に一度、日本から医師団が健康診断に訪れる。この健診だけ受けているのが二十一人(6.7%)いる。一方、「特にかかっていない」と答えたのは十四人(4.5%)だった。

 渡日治療で必要となる被爆者健康手帳については、二百三十一人(74.0%)が取得している。半面、持っていない被爆者も六十三人(二〇・二%)と二割を超えた。来日の機会がなかっただけでなく、被爆から半世紀以上すぎ、原則二人の証人など取得に必要な被爆状況の証明が困難な事情もあるとみられる。

  ▼アンケート結果

  自分の健康についてどう思いますか
良い    13人  4.2%
まあまあ  98  31.4
やや悪い 106  34.0
悪い    78  25.0
無回答   17   5.4

  医療機関などでの受診状況は(小数点第2位を四捨五入)
通院している     182人 58.3%
 年に数回       71人
 月に1回以上     61
 週1回以上      32
 ほぼ毎日       12
 無回答         6
国内で入院している    1   0.3
日本からの医師団による
健診のみ受けている   21   6.7
特にかかっていない   14   4.5
無回答         94  30.1

  被爆者健康手帳を取得していますか
取得している 231人 74.0%
取っていない  63  20.2
無回答     18   5.8

 《記事の読み方》在外被爆者の名前(年齢)▽現住所▽被爆状況▽「どういう手助けや情報が必要と思いますか」との設問への回答―の順。米国の現住所で州名がないのはカリフォルニア州。被爆地の地名は当時の表記による。入市被爆の日付は8月。

 《調査方法》アンケートは、協力が得られた被爆者を対象に、記者が現地を訪れた韓国、米国、ブラジル、パラグアイでは本人の直接記入、または記者による聞き取りで回答を集めた。アルゼンチン、カナダ、中国の3カ国は郵送などで回収した。

(2002年8月8日朝刊掲載)

在外被爆者 本紙アンケート 「健康が心配」8割 老後の生活に不安

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