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米カトリック界 核への意識に変化 関係者ら相次ぐ広島訪問 原爆投下を謝罪 廃絶訴える

 米国のカトリック系平和団体の巡礼団が3月、広島市を訪れ、被爆者たちに面会して自国による原爆投下を謝罪した。昨年夏には広島と長崎に投下された原爆の開発拠点がある大司教区のトップも広島で核兵器廃絶を訴えた。原爆投下を正当化する風潮が依然として根強い米国だが、カトリック界では変化が芽吹きつつある。(山田祐)

 「全ての被爆者やその子孫の方々に、米国の同胞が犯した残虐な行為に対する許しを求める」。中区の世界平和記念聖堂で3月10日にあった集会で、平和団体「パックス・クリスティ」米国支部の巡礼団の1人が声明を読み上げた。広島の被爆者7団体のうち、参加を見送った市原爆被爆者協議会(会長・松井一実市長)を除く6団体の代表者が受け止めた。

 巡礼団の11人は集会に先立って営まれたミサにも参列した。カトリック広島司教区の白浜満司教は説教で、2019年に広島を訪れたローマ教皇フランシスコの「核兵器を保有すること自体が倫理に反する」の言葉を引用した上で、「核兵器は人間が造り出し、人間を自滅させる愚かな手段だ」と強調した。

 参列した広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(82)は「キリスト教の立場から真摯(しんし)に平和を希求する姿勢を感じ取れた」と話した。

 米国のカトリック界では22年、原爆の開発拠点を管轄エリアに含むニューメキシコ州サンタフェ大司教区のジョン・ウェスター大司教が、核兵器廃絶を訴える書簡を発表した。23年の原爆の日には広島市を訪れ、平和記念式典に参列。「(核兵器の非人道性を発信するため)広島司教区や長崎大司教区と連携を深める」と述べた。

 今回も含め、広島での受け入れで関係各所との調整に奔走したのが白浜司教だった。ロシア軍によるウクライナ侵攻、パレスチナ自治区ガザでの戦禍が続く今、平和へ向けた発信の意義をあたらめてかみしめ、「被爆地からできることを続ける」と話す。

(2024年4月22日朝刊掲載)

被爆者と対話 活動の原動力に 巡礼団代表のクッシングさん

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