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被爆者と対話 活動の原動力に 巡礼団代表のクッシングさん

 世界各地に拠点を広げ、平和や人権の尊重を訴えている「パックス・クリスティ」。米国支部の巡礼団の代表者の1人、ボブ・クッシングさん(73)に、謝罪に訪れた経緯と思いを聞いた。(山田祐、小林可奈)

 カトリックの神父だったクッシングさんが核兵器の恐ろしさを心に刻んだのは、長崎で反核運動をけん引した谷口稜曄(すみてる)さん(2017年、88歳で死去)との出会いだった。

 谷口さんは1985年の渡米時に教会を訪ねてきた。背中一面に刻まれた傷を見せてくれつつ、一方的に原爆投下を責めることはしなかったという。和解に向けた対話の大切さを教えられたクッシングさん。「心を根本から揺さぶられる体験だった」と振り返る。

 2003年、イラク戦争が勃発。なぜ戦争が起きるのかと考えを深めるうち、あらためて広島と長崎への原爆投下の罪の大きさを思った。05年、米国の一市民として謝罪したいと、広島での対話集会に参加。ある女性から声をかけられた。

 2歳の時、原爆で母を亡くしたというその女性はこう語ったという。「母の死について、どんな形であれ謝ってくれたのはあなたが初めてです。ありがとう」。核兵器廃絶に向けた活動に注力することになる決定的な言葉だった。

 クッシングさんは「教皇フランシスコの言うように、核兵器は保有するだけでも倫理に反する。それが分からない人にキリスト教の信者を名乗る資格はない」とも説く。米国では依然として核兵器を肯定する風潮が根強い。「ほとんどの信者は、間違った価値観を改める準備すらできていない。一人一人に訴えていくしかない」

 今回、広島であらためて被爆者に謝罪の意を伝え、箕牧さんと固い握手を交わした。何人もの被爆者と話して核兵器の非人道性を再確認したといい、「活動の原動力にしていく」と話す。

(2024年4月22日朝刊掲載)

米カトリック界 核への意識に変化 関係者ら相次ぐ広島訪問 原爆投下を謝罪 廃絶訴える

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