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8・6式典規制強化 被爆者団体 一定の理解 追悼する市民へ影響懸念も

 広島市の平和記念式典で、会場となる平和記念公園(中区)の入場規制が今年から強まる。昨年のデモ参加者による事件を受け、市が「安全対策の強化」を理由に判断した。厳粛な式典へ一定に理解する声はあるが、一帯での慰霊の営みへの影響も否めず、市は丁寧な説明が求められる。(野平慧一、向井千夏)

 市は8月6日午前5~9時に公園全体を入場規制し、拡声器やプラカード、ビラ、のぼり、横断幕など式典の運営に支障を来す物の持ち込みを禁止する。例年、原爆ドーム前では慰霊祭が営まれ、原爆の子の像や原爆供養塔周辺で追悼する遺族、市民たちもいるが、規制時間帯は入場口6カ所で手荷物検査を受けて園内に入る必要がある。

 広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長は「多くの人が亡くなったこの日だけは厳粛な式典であってほしい」と市の対応を理解しつつ「規制しないと収まりがつかないのは残念だ」。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長は「エスカレートしてほしくないが、規制だけで解決するだろうか」と受け止めた。

 ここ数年の式典では、ドーム周辺でのデモ活動を巡り市民団体同士が対立してきた。昨年は「8・6ヒロシマ大行動実行委員会」主催のデモに参加した5人が市職員に体当たりしたとして刑事事件に発展した。

 「静かな8月6日を願う広島市民の会」の石川勝也代表は規制強化を「市の平和推進基本条例を基に、慰霊の日にふさわしい厳粛な式典を期待したい」と歓迎する。一方、実行委の宮原亮事務局長は「声を上げるのを抑え付け、反戦反核運動への弾圧だ」と非難。市へ撤回を求め、デモを続ける姿勢を示す。

 市は対応策を巡り広島県警と協議を重ねてきたが、広島弁護士会の山田延広弁護士は「誰もが慰霊碑やドームを見たり祈ったりする場所で入場規制はおかしい。市民運動を制限し、表現の自由を抑え込むことになる」と懸念する。

 市の市民活動推進課は「特定の団体の言論封殺をしようという意図はなく、混乱が起きないよう規制の趣旨を理解してほしい」と説明。県警警備課は「参列者や要人の安全確保、式典の円滑な推進のため、市と連携して安全な警備措置を講じていく」としている。

(2024年5月8日朝刊掲載)

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