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米英大使、長崎式典欠席【解説】政治的立場 持ち込むな

 米国のエマニュエル駐日大使は、長崎市が9日の「原爆の日」に開く平和祈念式典を欠席する。米大使館が7日、明らかにした。パレスチナ自治区ガザを攻撃するイスラエルを招待しなかったことを受けた対応。ロングボトム駐日英大使も6日に問題視する立場を記者団に示し、欠席を決めた。日本を除く先進7カ国(G7)と欧州連合(EU)の駐日大使や代表が連名で、イスラエルを招待しないことに懸念を表明する書簡を長崎市に送っていたことも判明した。

広島市と長崎市がそれぞれ原爆の日に営む式典は原爆犠牲者を追悼し、平和の尊さを共有する場だ。だが特定の国を呼ぶ呼ばないで論争を生み、長崎では駐日大使の欠席が広がる事態になった。どの国も政治的な立場を持ち込むべきではない。

 米国のエマニュエル大使は6日に広島市であった平和記念式典に参列後、更新したX(旧ツイッター)にこう記した。「憎しみ合う敵同士だった国でも、戦争の廃虚から立ち上がり、親友そして最も親密なパートナーになれるのだと、広島は教えてくれる」

 それは長崎も同じはず。なのに親密なイスラエルに足並みをそろえて欠席するのは自ら「式典の政治化」に拍車をかけるだけではないか。

 広島市では、ウクライナへの侵攻を続けるロシアと支援するベラルーシを「式典の円滑な挙行に影響を及ぼす可能性がある」として招待を見送った一方、イスラエルを招いたために被爆者や市民から批判が出た。もとをただせば、ロシアとベラルーシの式典参加に反対したのは外務省だ。

 広島、長崎両市は核兵器廃絶と非戦の思いの共有へ被爆地訪問を呼びかける姿勢を貫くべきだ。被爆国政府はそれを支える責務がある。(渡辺裕明)

(2024年8月8日朝刊掲載)

「責任意識がおろそか」 米英大使の長崎式典欠席 広島から批判

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