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「平和の遺志継ぐ」誓う被爆者 教皇フランシスコ 死去 19年訪問 広島で悼む声

 ローマ教皇フランシスコが21日に亡くなり、被爆地広島に悲しみが広がった。2019年11月の訪問時には、核兵器の使用や保有を否定するメッセージを世界へ発信。被爆者団体や関係者は遺志を受け止め、核兵器廃絶への決意を新たにした。

 被爆者の梶本淑子さん(94)=広島市西区=は握手した教皇の手のぬくもりを今も覚えている。平和記念公園(中区)であった「平和のための集い」で対面し、証言。「悲しい。小さな私だが教皇の遺志をつないでいきたい」と話した。

 集いに招かれた被爆者の一人でカトリックの加藤文子さん(95)=安佐南区=は教皇に肩を抱かれた。「あの時のことを思い出し、涙がこぼれた」と声を震わせた。

 広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(83)は「世界の政治家が戦争をやめるよう言って聞かせてください」と伝え、手紙も渡したといい「寂しい限り」。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(80)は抱擁を思い出に「私ももうひと踏ん張りし、国内外に被爆の惨状を伝えたい」と前を向いた。

 教皇は何より演説で被爆地を後押しした。創立者が教皇と同じイエズス会出身というエリザベト音楽大(中区)の川野祐二学長(66)は「とても思慮深く、世界平和のために尽くしたいとの力強い思いを感じた」。集いを取材した元中国新聞ジュニアライターで、スウェーデン留学中の広島大3年岡島由奈さん(20)は「何も臆することなく核兵器保有国のリーダーを批判した姿勢に心が動かされた」と振り返る。

 教皇は広島での移動時に小型車「マツダ3」を利用した。教皇庁から小型で環境に優しい車の要望があったという。

 受け入れに奔走したカトリック広島司教区の白浜満司教(62)は「温厚でユーモアもある方。雲の上の存在のはずが身近に感じられた」としのぶ。司教区は20年、平和団体などと「核なき世界基金」を設立。「『平和のために働きなさい』と背中を押してもらったようで心強かった。今後も教皇の思いを引き継ぎ、行動し続ける」と誓った。

 松井一実市長は「教皇の思いは核兵器廃絶を願う世界中の多くの市民を勇気づけた」、湯崎英彦知事は「広島で語られた言葉の重みを受け止め、核廃絶と持続可能な平和の実現に向け一層の努力を続ける」とそれぞれコメントを発表した。

(2025年4月22日朝刊掲載)

教皇フランシスコ 死去 平和外交 核廃絶訴え 「戦争に原子力使用 犯罪」

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