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被爆80年託す想い 2度も見た地獄 広島・長崎で被爆

 現存最古の天守を誇る犬山城で知られる、愛知県犬山市。今道量友(かずとも)さん(91)はこの町に暮らし、半世紀になる。若い頃は腕利きの溶接工として国内外を飛び回ったが、妻の郷里に自身の会社を起こし、腰を落ち着けた。

 ただ町に溶け込んでからも、周りには自身の過去を語ってこなかった。「2度も地獄を見たんだ。思い出すのはつらいし、理解してもらえるとも思えないから…」

 1945年8月6日。11歳だった今道さんは広島にいた。爆心地から約2キロ。登校中に閃光(せんこう)を浴び、惨状を目撃した。焦土と化した町を離れ、両親の郷里・長崎にたどり着いたのは9日。待ち受けていたのは、もう一つの爆心地のむごたらしい光景だった。そして今道さんは、二つの被爆地で被害を受けた「二重被爆者」となった。(編集委員・田中美千子)

(2025年7月28日朝刊掲載)

被爆80年託す想い 今道量友さん 倒れた人 またいで逃げた 苦悩の記憶 「伝えねば」

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