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基地負担の現在地 普天間と岩国 <上> 自治体の姿勢

 ともに大規模な米軍基地を抱える岩国市と沖縄県宜野湾市が今月、姉妹都市提携を結んだ。普天間飛行場(宜野湾市)の負担の一部を岩国市が受け入れたのが契機となった。岩国市側が理解を示す「沖縄の負担軽減」は全国の自治体に広がってはいない。普天間と岩国を取り巻く人たちの声を聴き、在り方を考えた。(長久豪佑)

給油機移転を機に交流

 普天間飛行場のすぐ脇にある宜野湾市民会館。今月上旬、両市による姉妹都市の協定式が開かれた。宜野湾市の佐喜真淳市長や同市議会の呉屋等議長は一様に、岩国市への感謝を口にした。

 2014年に普天間飛行場のKC130空中給油機全15機が岩国基地(岩国市)に移転した。それを受け入れた岩国の関係者への謝意だ。両市は移転を巡る意見交換を機に、基地問題以外へも交流を広げてきた。

 空中給油機は飛行中の航空機に燃料を注ぐ「空のガソリンスタンド」の役割を持ち、戦闘機の行動範囲を格段に広げる。米軍の戦略にとって重要な航空機と言える。

 当時、移転開始を容認した岩国市の福田良彦市長は「沖縄の負担軽減を目に見える形で進める」との政府の姿勢に理解を示した。宜野湾市によると騒音の低減などにつながったという。

リスクも移る

 ただ、リスクを岩国の住民がかぶったことも意味した。岩国で騒音被害の損害賠償などを求める訴訟原告団の吉岡光則事務局長(79)は「岩国基地の危険性が増した」とみる。重要戦力の配備で有事の際に標的になる可能性が高まるとの見方だ。

 部隊の運用状況は明らかになっていないが、23年には浜田市で、危険とされる陸地上空での空中給油をしたとみられる様子が確認された。

 沖縄から本土への機能移転はあくまでレアケースだ。普天間飛行場の返還に日米両政府が合意した1996年以降、沖縄の基地の部隊が県外へ移った例は他にない。佐喜真市長は「基地が安全保障上必要というなら、全国の皆さんがもう少し勉強していただければ解決の方向に進んでいくと思う」と話す。

 岩国市議会はかねて、沖縄の負担を全国で分け合うべきだと呼びかけてきた。16年、当時議長だった桑原敏幸市議が代表世話人となり「議員有志の会」を設立。全国の地方議員と、米軍機やその訓練の本土への分散について議論している。

「国が主導を」

 二の足を踏む全国の自治体の理解をどう進めるか。「ギブ・アンド・テイクだ」と桑原氏は語る。「国が財源をきっちり還元すれば、受け入れる自治体はあるはずだ。国が主導すべきだ」

 負担の見返りにカネを措置する―。「現実的」という見方はある。実際、国から岩国市への交付金は、KC130部隊移転の翌年度に増額された。負担が地域振興に結びついている。

 ただ、どんな場所でも本来、住民の平穏が脅かされていいはずはない。そもそも負担を「どこかがかぶる」という発想でいいのか。幅広く、丁寧な議論が必要だ。両市の友好関係を取材し、重い課題を突きつけられているように感じた。

(2025年7月30日朝刊掲載)

基地負担の現在地 普天間と岩国 <下> 「返還」の現状

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