原爆犠牲者のDNA型鑑定 供養塔の遺髪 広島市 初実施へ 身元特定の可能性
25年11月17日
引き取り手が見つからない平和記念公園(広島市中区)の原爆供養塔の遺骨を巡り、広島市が身元を特定するためDNA型鑑定を初めて実施することが分かった。遺骨自体の鑑定は難しいが、一緒に納められた遺髪によって鑑定できる可能性があると判断した。成功すれば、市は対象を広げる方針だ。(山本祐司)
原爆供養塔の遺骨は火葬の際に焼かれており、一般的にDNAの抽出は難しいとされる。そのため市は遺族の要望があっても、遺骨を鑑定に出していなかった。今回は、照会があった犠牲者の骨つぼに遺髪が入っていたことが鑑定を進める決め手になった。
作業は、戦没者のDNA型鑑定で実績がある神奈川歯科大(神奈川県横須賀市)が担当する。同大からは「80年前の毛髪でかなり厳しいが、鑑定できる可能性がある」との回答を得たという。費用は広島市が負担する。
鑑定には20本程度の毛髪が必要になるため、市は遺族の立ち会いの下、鑑定に出す試料を選ぶ。DNAの抽出ができた場合、他の犠牲者の遺髪についても遺族から求めがあれば鑑定に出す。もし抽出できなければ80年前の毛髪での鑑定は物理的に難しいと判断し、今後は実施しないという。
市が20年以上前に作った台帳によると、供養塔で骨つぼに遺髪もある犠牲者は10人程度いるとみられるが、正確な人数は把握できていないという。詳しい調査や情報公開の方法も今後の課題になりそうだ。市原爆被害対策部調査課の上本慎治課長は「原爆犠牲者の遺骨を返還するのは市の責務と考える。DNA型鑑定ができる可能性があるのなら今後も進めたい」と話している。
原爆供養塔
約7万人分とされる原爆犠牲者の遺骨を安置する。大多数の遺骨は「氏名不詳」として納めている。名前が分かりながら引き取り手が見つかっていない遺骨(現在は812人分)について、広島市は返還に向けて納骨名簿を毎年公表。市の関連施設などに掲示するほか、全国の自治体や被爆者団体など約2千カ所に発送している。
(2025年11月17日朝刊掲載)
原爆犠牲者のDNA型鑑定 広島市【解説】市民の被害解明に一石
原爆供養塔の遺骨は火葬の際に焼かれており、一般的にDNAの抽出は難しいとされる。そのため市は遺族の要望があっても、遺骨を鑑定に出していなかった。今回は、照会があった犠牲者の骨つぼに遺髪が入っていたことが鑑定を進める決め手になった。
作業は、戦没者のDNA型鑑定で実績がある神奈川歯科大(神奈川県横須賀市)が担当する。同大からは「80年前の毛髪でかなり厳しいが、鑑定できる可能性がある」との回答を得たという。費用は広島市が負担する。
鑑定には20本程度の毛髪が必要になるため、市は遺族の立ち会いの下、鑑定に出す試料を選ぶ。DNAの抽出ができた場合、他の犠牲者の遺髪についても遺族から求めがあれば鑑定に出す。もし抽出できなければ80年前の毛髪での鑑定は物理的に難しいと判断し、今後は実施しないという。
市が20年以上前に作った台帳によると、供養塔で骨つぼに遺髪もある犠牲者は10人程度いるとみられるが、正確な人数は把握できていないという。詳しい調査や情報公開の方法も今後の課題になりそうだ。市原爆被害対策部調査課の上本慎治課長は「原爆犠牲者の遺骨を返還するのは市の責務と考える。DNA型鑑定ができる可能性があるのなら今後も進めたい」と話している。
原爆供養塔
約7万人分とされる原爆犠牲者の遺骨を安置する。大多数の遺骨は「氏名不詳」として納めている。名前が分かりながら引き取り手が見つかっていない遺骨(現在は812人分)について、広島市は返還に向けて納骨名簿を毎年公表。市の関連施設などに掲示するほか、全国の自治体や被爆者団体など約2千カ所に発送している。
(2025年11月17日朝刊掲載)
原爆犠牲者のDNA型鑑定 広島市【解説】市民の被害解明に一石








