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被爆樹木24%生育に問題 広島の民間管理58本 本紙調査 市、回復へ補助制度

 広島市は2019年度、74年前の惨禍を乗り越えた被爆樹木の樹勢回復のための補助制度を設ける。政府予算案に被爆地の取り組みを支援する費用が計上されたことを踏まえる。対象となる市内の民間所有の58本の管理者に中国新聞が聞き取り調査したところ、24%の14本について生育状況に問題があると回答。新制度への期待は高い。(桑島美帆、増田咲子、山本祐司)

 市が登録する爆心地から約2キロ圏内の被爆樹木はクスノキ、シダレヤナギなど31種161本。市管理の84本は01年度から樹勢回復の処置を順次行い、国と広島県の所有分も一定に対策を取ってきた。これに対して神社、学校法人、町内会といった民間の管理者は23施設・団体に上るが、保護は民間任せだった。

 被爆体験継承という目的で、行政として害虫駆除や土壌改良などの支援に乗り出す。厚生労働省が被爆者対策費の一環で予算案に計上したのは広島市3本分、長崎市1本分の補助計120万円。広島市は国会での成立を待って年間の対象本数や補助率、上限などを決める。国費に市費を上乗せする被爆建物保全の補助制度を参考にするという。

 ただ木によっては老木化や病気で枯死の恐れが出ている。民間管理者への聞き取り調査では、半数以上の12施設・団体が「害虫が付く」「幹が空洞化してキノコが生える」「枯れ枝や茶色い葉が増えた」などと計14本について具体的な症状を挙げた。保全への意欲は強い半面、16施設・団体が「手入れに手間と費用がかかる」「台風で枝が折れると危険」など管理上の切実な課題や不安を訴えた。

 それだけに補助制度は12施設・団体が利用したいとしている。爆心地から1・7キロ、被爆ナツミカン2本が残る広島市中区白島九軒町の光明院の住職で被爆者の景山芳明さん(77)は「木には原爆の傷痕が残るが、害虫に悩まされている」と弱った木が行政の支援で回復することを期待する。

 制度を担当する広島市国際平和推進部の津村浩部長は「被爆樹木は失えば二度と取り戻せない。所有者と相談しながら状態の悪い木から優先的に支援したい」と話している。

(2019年1月7日朝刊掲載)

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