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被爆の惨状伝える新空間 広島の原爆資料館 来月25日再開館

 原爆資料館(広島市中区)の4月25日のリニューアルオープンまで、間もなく1カ月となる。犠牲者の遺品など実物資料を中心に展示し、きのこ雲の下の惨状や被爆者の苦しみが伝わるよう工夫を凝らす。あの日を語り継いできた被爆者が高齢化する中、残された「無言の証人」から核兵器の非人道性を感じ取る新たな空間が生まれる。(野田華奈子)

 本館の展示は4コーナーで構成され、都市や人の原爆被害を伝える「8月6日の惨状」と「放射線による被害」、遺影と遺品を通して被爆者や遺族の苦しみに向き合う「魂の叫び」、被爆者の戦後の人生に焦点を当てた「生きる」の順番で見学する。実物資料約260点(複製6点を含む)をはじめ、「原爆の絵」や写真など計約490点の資料を並べる。

 1955年に開館した原爆資料館の大規模リニューアルは3度目。今回の整備では本館を「被爆の実相」、東館を核実験被害など「核兵器の危険性」、復興や平和活動に関する「広島の歩み」と位置付けた。有識者による展示検討会議で2010年8月に議論を開始。東館は既に展示改装を終え、先行して17年4月に再開した。

 原爆資料館の17年度の入館者数は168万923人。開館以来、2番目に多い。16年5月のオバマ前米大統領の来館や17年7月の核兵器禁止条約制定などによる世界的な関心の広がりが背景にあり、高水準が続く。外国人の数は39万2667人で、5年連続最多を更新した。被爆者健康手帳を持つ被爆者の平均年齢は18年3月末時点で82・06歳となった。

 資料館は本館オープン前日の4月24日、準備のため午後2時に閉館する。

原爆資料館
 1955年に本館、94年に東館が開館した。広島市は国重要文化財の本館の耐震化を進め、被爆の惨状や核兵器の非人道性をより分かりやすく伝える施設を目指し、2014年3月に全面改修に着手。東館は同年9月に展示スペースを閉じて改装し、17年4月に再び開館した。入れ替わって本館を閉鎖し、内部改修と耐震化を進めた。耐震化工事は19年度中に終える。総事業費は70億3500万円。

(2019年3月20日朝刊掲載)

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