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NPT会議1年延期へ 国連で決定見通し 新型コロナ

 4月27日~5月22日にニューヨークの国連本部で予定されている核拡散防止条約(NPT)再検討会議について、複数の軍縮外交筋は12日、4月の開幕を1年延期する方向で最終調整していることを明らかにした。新型コロナウイルスの世界的大流行への対応が理由で、近く国連で決定する見通し。今年8月への小幅延期も選択肢に上っているが、他の軍縮関連会議の日程もあり、来年4月への延期が有力だ。

NPT会議1年延期へ 新型コロナ【解説】被爆者高齢化 重い時間

 新型コロナウイルス感染症の影響で、5年に1度のNPT再検討会議の1年延期が濃厚となった。新たな核軍拡競争が展開されているとも言える世界情勢の中、被爆者が世界から集まる政府代表たちに直接、核軍縮を迫る機会は遠のいた。年を重ねた被爆者にとって「1年」という時間は重い。

 被爆者の平均年齢は82・65歳(昨年3月末時点)。日本被団協は「再検討会議への大規模な代表団はおそらく最後になる」との覚悟で臨んでいた。核兵器を市民の頭上で唯一、使用した国を訪れ、証言できる時間は、決して多くは残されていないのが現実だ。

 今回の代表団は幼い頃に被爆した人が多いが、それでも年齢は80歳前後となる。これからの1年で、13時間のフライトに耐え、渡米することが難しくなる人がいても不思議はない。

 今年の再検討会議は厳しい展開が予想されていただけに、1年間を好機にするべきだとの指摘は、確かにある。米国とロシアの新戦略兵器削減条約(新START)の延長など、核兵器保有国が少しでも核軍縮への努力を積み重ねれば、好材料になるとの考えだ。

 しかし、その1年間が国家間の権勢争いや外交ゲームに費やされないためにこそ、被爆者は肉声を届けようとした。自らが強いられた苦難を繰り返さないよう訴えるはずだった。

 日本政府は「唯一の被爆国」を掲げる。訴えの場を失った被爆者の願いを引き受け、外交の場で代弁する責務は、さらに強まった。(明知隼二)

(2020年3月14日朝刊掲載)

「核廃絶 声届けたかった」 NPT会議延期 被爆者ら落胆

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