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米 核廃絶へ行動を バイデン氏勝利宣言 広島の被爆者ら 北朝鮮の非核化にも期待

 米大統領選で民主党のバイデン氏の勝利が確実となり、広島の被爆者や核兵器廃絶運動に取り組んできた人たちは9日、原爆を投下した核超大国の新たなトップとして核兵器廃絶への具体的な行動を求めた。バイデン氏は、「核兵器のない世界」を掲げ、被爆地広島を訪れたオバマ前大統領の目標を受け継ぐとみられ、北朝鮮の非核化などにも一定の期待が広がった。(水川恭輔、猪股修平、明知隼二)

 「自国第一主義をうたい、国際的な約束をほごにしてきたトランプ氏には共感できず、新たな核兵器開発の懸念も消えなかった。バイデン氏は、核兵器のない世界の実現に行動してほしい」。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(78)は力を込める。

 トランプ政権は「使える核兵器」と称される小型核の開発などを進めた。箕牧さんは、バイデン氏がオバマ氏の下で副大統領を務めた経験を生かし、核軍縮を前に進めるよう願う。「オバマ氏から広島の感想を聞き、実際に訪れて被爆の実態を知ってほしい」

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(76)は「国際協調を重視する民主党政権となる。すぐに核兵器廃絶が進むとは思えないが、核軍縮はトランプ政権より進む可能性がある」と期待。「ただ、オバマ政権でも核廃絶は思うように進まなかった。私たちは声を上げ続ける」と強調した。

 トランプ政権下では、米国はイラン核合意を一方的に離脱し、ロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)の延長交渉も停滞。核不拡散や核軍縮に向けた国際協調にことごとく背を向けてきた。

 「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」(HANWA)の森滝春子共同代表(81)は「政権交代で少なくとも常識的な協調姿勢が戻ると思うと、少しほっとした」と語る。来年1月に発効する核兵器禁止条約については「米国の核政策が抜本的に変わるわけではない」としつつも、「対話のテーブルに着く可能性はある。米国の市民とも連携し、変化を後押ししたい」と力を込めた。

 トランプ氏は2018年にシンガポールで金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と会い、史上初の米朝首脳会談を実現。一方で北朝鮮の非核化に進展は見えない。

 爆心地から1・8キロ付近で被爆した韓国原爆被害者対策特別委員会の李鐘根(イ・ジョングン)委員長(91)は「日韓は米国の核の傘の下におり、北朝鮮に効果的に核放棄を迫ることができない。米国のリーダーは非核化アプローチの先頭に立ってほしい」と注文した。

 胎内被爆者で県朝鮮人被爆者協議会の金鎮湖(キム・ジノ)理事長(74)は「米国が北朝鮮への敵対政策を放棄して信頼関係を築けば、朝鮮半島から核兵器がなくなる可能性はある。シンガポールでの朝米共同宣言の精神を踏まえ、平和構築に尽力してほしい」と望んだ。

(2020年11月10日朝刊掲載)

「使える核」政策 変化も オバマ氏の路線 継承か

着実な進展期待 広島の松井市長

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