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「使える核」政策 変化も オバマ氏の路線 継承か

 核超大国の新しいリーダーに選ばれたのは、「核兵器のない世界」を掲げたオバマ前大統領の路線を継承する民主党のバイデン前副大統領だった。バイデン氏の勝利により、共和党のトランプ政権が志向した「使える核」の政策に少なからず変化が生じるとみられ、今後のバイデン氏の言動に注目が集まる。

 バイデン氏は、2009年にチェコ・プラハで「核なき世界」の構想を提唱し、ノーベル平和賞を受賞したオバマ氏が大統領だった当時の副大統領。16年に現職の大統領として初めて被爆地の広島を訪問し、頓挫したとはいえ、「核の先制不使用政策」の採用を検討したオバマ氏の路線を引き継ぐとみられる。

 広島への原爆投下から75年となった今年の8月6日には声明を発表。「広島、長崎の恐怖を二度と繰り返さないため、核兵器のない世界に近づけるよう取り組む」と強調し、オバマ氏の姿勢を引き継ぐ決意を明確にしている。

 一方のトランプ政権は18年、新たな核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」を公表し、核兵器の使用条件を緩和。小型核の開発を盛り込んだ。核兵器の役割低減を目指したオバマ政権の方針を転換し、冷戦終結を後押しした中距離核戦力(INF)廃棄条約や、イランの核開発を制限する核合意から離脱した。

 「オバマ氏の広島訪問は核兵器の非人道性を訴える運動の大きな流れにつながった。大統領選でトレンドが変われば、米国なりの言葉で非人道性の訴えに答える可能性はある」。3日、原爆資料館(広島市中区)であった核兵器禁止条約をテーマにしたシンポジウムで、非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))の川崎哲国際運営委員は強調した。

 核軍拡への不安が被爆地に広がり続けたトランプ政権の4年間。バイデン氏に政権が移れば、幻に終わった核の先制不使用が検討される可能性もある。「核の傘」に依存する日本政府も対応の変化を求められそうだ。(久保田剛)

(2020年11月10日朝刊掲載)

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