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ICANに罹災証明寄贈 被爆者でバラ育種家 田頭さん 

 バラ育種家で被爆者の田頭数蔵さん(91)=廿日市市友田=が、75年間大切にしてきた罹災(りさい)証明書を非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))の本部(スイス・ジュネーブ)に寄贈した。あの日の悲惨を世界に伝え続けることに生かしてほしい、との願いを込める。

 田頭さんは1945年8月6日夕に広島市内へ入り、火災に阻まれながら爆心地付近を通って上天満町(西区)の自宅にたどり着いた。住所や名前が記された罹災証明書の交付は、その2日後。壊滅した街をさまよい歩いた証しとして、手のひらほどの大きさの紙片を金庫で保管していた。

 2019年1月、核兵器禁止条約の実現に貢献したICANの活動に感銘を受けた田頭さんは、新作のバラにICANの名を付けた。以来、ICANとの縁を深めている。罹災証明書の寄贈も思い立ち、今年夏に国際運営委員の川崎哲さん(51)に託した。川崎さんが共同代表を務めるNGOピースボート(東京)で保管しており、新型コロナウイルスの影響が緩和し次第、スイスに持ち込むという。

 今月5日、川崎さんは「(バラと罹災証明書という)二つの贈り物をいただいたことを心から誇りに思う」とするベアトリス・フィン事務局長名の書簡を携え、広島バラ園に田頭さんを訪ねた。核兵器禁止条約が来年1月に発効することを報告。「ICAN」のバラ畑も見学した。

 田頭さんは、助けを求める負傷者に何もできなかったことや、原爆に弟を奪われた悲しみを口にしながら「被爆者の思いを知ってほしい」と語った。川崎さんは「バラの写真とともに世界で見てもらい、広島で起こったことを実感してもらえるようにする」と約束した。(金崎由美)

(2020年11月16日朝刊掲載)

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