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[ヒロシマの空白 被爆76年] 市女の悲劇 招いた軌跡 舟入高 大量の学徒動員記録

 舟入高(広島市中区)が、前身の広島市立第一高等女学校(市女)から引き継いだ学徒動員に関する戦時中の公文書や日誌などを大量に保管していることが18日、分かった。学校が県や軍の指示に愚直に従って動員を進め、結果的に市内の旧制中学や女学校の中でも最悪の原爆犠牲者を出すに至った実態に迫る貴重な一次資料だ。

 主に1943~45年の文書で、県が各学校に学徒動員の拡大を求めた通達など約400点をとじた「公文往復綴(つづり)」のほか、市女が関係機関に提出した「報告書」の冊子、引率教員による学徒勤労日誌など約30点に上る。被爆死した1、2年生の学籍簿も残されていた。

 これまで校長室や図書室の棚にしまわれており、大半が未公開。原爆で庁舎を全焼した市や県に、一連の資料は残っていない。広島市立大広島平和研究所の四條知恵准教授は「学校が動員にどう協力し、軍隊化していったかを検証できる。地域の知的資源だ」と指摘する。一方、被爆直後の様子を教師が交代で記録した「経過日誌」や「生徒調査表」は数年前から所在不明になっているという。

 柳智子校長は「当校にとって大切な資料だが、保管状況を考えれば、今後は同窓会と相談しながら公的機関への寄託を検討すべきだろう」と話す。

 米軍による76年前の原爆投下で、市女は建物疎開作業に動員されていた1、2年生541人を含む676人が死亡した。(桑島美帆)

(2021年7月19日朝刊掲載)

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