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[ヒロシマの空白 被爆76年 証しを残す] 被爆関連医療記録 収集へ 広島県医師会 会員に依頼文

 被爆直後のカルテなど被爆関連の医療記録の保存が課題となる中、広島県医師会(広島市東区)は4日、全ての会員を対象に、資料を残していれば同会に知らせるよう依頼する文書を郵送した。同会によると、過去に被爆体験記は募ったが、資料の有無を包括的に調べるのは初めて。原爆の非人道性や、惨状の中での医師の苦闘を伝える貴重な資料と位置付け、会として後世に残す道を探る。

 76年前の米軍による原爆投下後、県内では多くの医師が救護に駆け付けたり、郊外や郡部に運ばれた負傷者を治療したりした。依頼文では、当時のカルテや手記、写真や日記など何らかの記録が残っていれば会に知らせるよう協力を要請。「これまで守ってこられた大切な資料を、人類が後世に残すべき記録として分かち合っていただければ」と保存の重要性を訴えている。

 対象は全会員約6900人。会員には現役の開業医のほか、引退した元開業医や、閉院した医院の流れをくむ勤務医などもいる。個人として資料を残している可能性もあるため、漏れなく呼び掛けの対象とした。

 実際に資料が見つかった場合は会員の意向を確認しながら、県医師会でいったん預かったり、複写をしたりしながら、将来的な保存方法を検討する。

 松村誠会長は「医療が原爆にどう向き合ったかを伝える記録の継承は会の責務。最後の機会と考えオール広島で取り組みたい」。広島大原爆放射線医科学研究所(南区)などとつくる放射線被曝(ひばく)者医療国際協力推進協議会(HICARE)を念頭に、一元的な管理も提案したいとしている。(明知隼二)

(2021年8月5日朝刊掲載)

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