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社説・コラム

社会情勢の変化踏まえて 広島大大学院教授 横山信二氏に聞く 上関原発埋め立て免許

 上関原発建設計画の公有水面埋め立て免許の延長を中国電力に許可した村岡嗣政山口県知事の判断について、広島大大学院の横山信二教授(64)=行政法・環境法=は「免許交付から約8年も経過しており、原発を取り巻く社会情勢の変化や新たな安全基準に照らして問題がある」と指摘した。(佐藤正明)

  ―県が埋め立て免許の延長を許可しました。
 上関原発に賛成とか反対ではなく、公有水面埋立法の視点からすれば、とんでもない判断といえる。県が最初に免許を交付した2008年10月から時間が経過しすぎている。埋め立て地に設置されるのが原発であることを踏まえると、その後に東日本大震災があり、社会情勢や安全基準は大きく変わった。同埋立法は免許基準を厳格に定めており、法の趣旨に反する。

  ―知事は埋め立て免許を「許可せざるを得ない」としています。
 あくまでも瀬戸内海における公有水面の埋め立ては環境保全に配慮しないといけない。瀬戸内海環境保全特別措置法(瀬戸内法)に規定があり、原発が環境保全にどう影響を与えるか、新たな安全基準とも照らし合わせて埋め立て免許の判断を示さないといけないが、その点にまったく触れていない。最初に許可した時点で原発の安全基準を満たしていたから、公有水面埋め立て免許も生きているという論法にはならない。あらためて新安全基準の下で判断しないといけない。

  ―村岡知事は、現時点で不許可にすれば違法になるとも説明しています。
 違法にはならない。免許権限はあくまで知事にある。知事が免許を出す時に、法律で定められている基準を満たしているかどうか、ちゃんと審査しないといけない。原発が再稼働された時のいろいろな社会の状況を見て、原発を取り巻く環境が変わったと察知すれば、8年前の免許はいったん取り消すのが妥当ではないか。白紙に戻し、もう一度埋め立てを許可するかどうかを判断し直すのが、法の定める手続きに従った知事のやり方だと思う。

  ―今後はどのような展開が予想されますか。
 埋め立て許可の期限を延長しても、すぐに工事はできない。そうなると中電が再び延長申請し、県が判断するという繰り返しになる。反対住民の動きもあり、これまで通り膠着(こうちゃく)状態が続くだろう。

よこやま・しんじ
 鹿児島市生まれ。広島大大学院法学研究科修士課程修了。大島商船高専助教授、松山大法学部教授、香川大・愛媛大連合法務研究科教授などを経て、2009年から広島大大学院社会科学研究科教授。

(2016年8月4日朝刊掲載)

埋め立て免許延長 上関原発 山口県が許可

工事再開は不透明 上関原発埋め立て 山口県の許可 条件付き

上関原発埋め立て 山口県が許可 一問一答

関係者の動向見守る 世耕経産相 上関原発埋め立て

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