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連載・特集

ホロコーストの中の子どもたち 福山の記念館 所蔵品から <3> カラフルな命 奪う世界

 赤いワンピースの少女がゲットー(ユダヤ人居住区)の中で息を引き取ろうとする母を守るように手を広げている。迫害の中で日々繰り広げられた光景だろう。ゲットーと強制収容所の劣悪な環境の下、飢えと病気で多くの人が亡くなった。

 米国の画家ジーニー・ネイヤーさんが、日本の子どもに向けたメッセージを添えて、この絵を記念館に贈ってくれた。「静かに立ち止まって、考えてください。あなたが笑い、学び、成長できること、そして優しい思いやりのある人になることが大切なのです。与えられたことを家族と友人、そして世界に分け与えてください」

 「夜と霧」とも表現されるホロコーストは、色彩が失われた灰色の世界だ。その中でこの赤色は、印象的に人々の心に残る。ある生還者が、赤い服を着た自分の娘が虐殺された様子を涙ながらに証言した事実をモチーフにしている。

 ホロコーストの悲劇は、150万人ものカラフルな小さな命が失われたことだ。当館の展示室の出口には同数の色とりどりのビーズでつくったオブジェを置いている。歴史の悲しさを今に伝えるために。(ホロコースト記念館・大塚信館長)

(2019年5月13日朝刊掲載)

ホロコーストの中の子どもたち 福山の記念館 所蔵品から <1>

ホロコーストの中の子どもたち 福山の記念館 所蔵品から <2> アンネ 幸せのメロディー

ホロコーストの中の子どもたち 福山の記念館 所蔵品から <4> 死体焼却 焦げたれんが

ホロコーストの中の子どもたち 福山の記念館 所蔵品から <5> 収容服 過酷な生活語る

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