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被爆者「闘い前進」 原爆症訴訟 6人敗訴 不満も

 「闘いが前進した」「被爆者の立場に立った行政をと警告を鳴らす判決」―。原爆症認定を巡る控訴審判決で広島高裁が原告11人のうち5人を原爆症と認めた22日、原告や弁護団から一定に評価する声が上がった。一方で、6人の訴えは今回も退けられた。被爆者の高齢化が進む中、不満や無念さもにじんだ。(今井裕希)

 判決後、広島市中区の広島弁護士会館であった報告集会。逆転勝訴で原爆症と認められた南石淑江さん(76)=安芸区=は「本当にうれしい」と笑顔を見せた。1歳の時に爆心地から約2・3キロ地点で被爆し、2007年に甲状腺機能低下症と診断され、投薬治療を続けてきた。

 脳内出血の影響で左半身不随となった中でも法廷に通い続けた。11年8月の提訴から約9年。「長い年月がかかった。認められないまま死ぬのではないかと思っていた」

 同じく原爆症と認定された東区の橋本静明さん(78)は支援者に感謝する一方、「同じ病気でも認められていない人もいる。放射線量に関係なく、全員を認めてほしかった」と語った。

 「国の判断を覆すことができず、生前病気で苦しんだ母に残念な報告しかできない」。10年に提訴後、17年の一審判決を聞くことなく14年に85歳で亡くなった田部恂子さんの訴訟を引き継いだ次男昭夫さん(64)=南区=は無念の思いを口にした。控訴審でも甲状腺機能低下症だった事実すら認められなかった。

 08年に国が認定基準を緩和した後、全国で被爆者120人が広島など7地裁に提訴した訴訟の一環。弁護団によると、原告の約8割が勝訴しているという。

 この日の広島高裁判決に対し、弁護団の池上忍弁護士は「一定に評価できる」としつつも「発症のメカニズムが分かっていない中、喫煙など他の原因を重視しすぎている」と批判。国の責任で広く救済する被爆者援護法の趣旨に合っていないと苦言を呈した。

(2020年6月23日朝刊掲載)

原爆症 二審は5人認定 広島高裁 6人 再び敗訴

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