Peace Seeds ヒロシマの10代がまく種(第15号) 世界の若者@ヒロシマ
15年8月13日
7月28日~8月8日に山口市で開かれたボーイスカウト国際大会「世界スカウトジャンボリー」の「ピースプログラム」で、広島市を訪れた海外からのスカウトたちに、原爆被害(ひがい)や核兵器、平和に関するアンケートをしました。50カ国・地域の1031人から回答が寄せられました。
平和記念公園を巡り、原爆資料館を見学したり被爆体験記の朗読を聞いたりしたスカウトたち。丁寧(ていねい)に書き込まれたアンケート用紙からは、国籍(こくせき)や性別、年齢(ねんれい)にかかわらず、原爆資料館の被爆者の写真や遺品が想像以上に悲惨(ひさん)でショックを受けた様子や、核兵器への嫌悪感(けんおかん)が伝わってきました。
スカウトたちには、折った鶴に平和に関するメッセージを書いてもらい、写真を撮(と)りました。世界中から平和を願う笑顔が集まりました。メッセージ入りの鶴は、モザイクアートにして、平和記念公園内の「原爆の子の像」にささげました。
「折り鶴モザイクアートにご協力してくださったスカウトの皆さん」
[ピース・シーズ] 世界の若者は原爆に衝撃 ジュニアライターがアンケート
紙面イメージはこちら
<ピース・シーズ>
平和や命の大切さをいろんな視点から捉(とら)え、広げていく「種」が「ピース・シーズ」です。世界中に笑顔の花をたくさん咲(さ)かせるため、小学6年から高校3年までの49人が、自らテーマを考え、取材し、執筆(しっぴつ)しています。
印象に残ったものは?
被爆者の写真・遺品…心痛む
多くの人が、原爆資料館の展示物が印象に残った、と答えています。被爆者のやけどの写真や、人の影の残った石段、遺品、溶(と)けたガラスなどです。「あまりにも恐(おそ)ろしく感情に訴(うった)えかけるので吐(は)き気がしました」と英国の16歳女子は答えました。鶴を折りながら亡くなった佐々木禎子(さだこ)さんの話を挙げた人もいました。
被爆証言も多くの人たちの心に残ったようです。ドイツから来た17歳女子は「原爆投下について教科書で習っただけの者にとって、被爆証言の朗読を聞くことは、より心に訴えかけ、深く理解するのに役立った」と回答しています。
他にも、原爆の惨禍(さんか)から復興を果たした広島の人々に感銘(かんめい)を受けたという人や、核兵器に対する嫌悪(けんお)の気持ちが強まったという人がいました。
原爆の投下に関する意見を記している人もいました。ブラジルの14歳男子は「米国が原爆の実験のために攻撃したことを恥(はじ)と感じる」と書いています。一方、米国の15歳男子からは「核兵器は極限状態でない限り使われるべきでない」という、保持に肯定的な意見が出るなど、違(ちが)いも。ボスニア・ヘルツェゴビナから来た17歳男子は「(展示を見て)悲しかったが、これまで繰り返されていない点では希望も感じた」と答えていました。(高2二井谷栞)
原爆・核兵器への認識は?
「戦争終えるため」違った
原爆の威力(いりょく)が予想以上でショックだった、というスカウトが目立ちました。英国の16歳男子は、原爆とホロコースト(ユダヤ人大虐殺(ぎゃくさつ))を重ね「残虐(ざんぎゃく)行為。衝撃的(しょうげきてき)だった」と書いています。
メキシコの16歳男子は「戦争を終わらせるために原爆が必要だったと思っていたが、今、ほかに平和的な方法があると分かった」と、考えの変化を記します。「ここを訪れて、核兵器の破壊的な影響(えいきょう)について、考えがより強まった」(ドイツ17歳女子)という答えもありました。
政府の立場を表しているような意見もありました。オーストリアの16歳男子は「大量破壊(はかい)兵器は平和をもたらさない。戦争だけだ」。一方、米国の16歳男子は「核兵器は決して使ってはならず、抑止(よくし)力としての使い方が正しい」という対照的な回答でした。
これからももっと多くの人に広島を訪れてもらい、原爆の恐ろしさを知り、核兵器や戦争、平和について考える人が増えてほしいです。(中3中川碧)
平和を阻んでいるものは?
「テロ」最多 「人種差別」続く
13項目から三つまで選んでもらいました。最も多かったのが「テロ」で、382人。アンケートに答えた人のうち約4割が選んでいます。回答者が10人以上の25カ国・地域ごとに見ると、トルコが75・0%と最も高く、12人中9人が選んでいました。ベルギー66・7%、オランダ57・6%と続きます。テロが世界中の若い人にも注目されていました。
次に多かったのが「人種差別」。334人と35・9%いました。ポルトガルは回答者14人中9人が選び64・3%、次いでコロンビアが63・6%(11人中7人)でした。一方、カンボジア0%、香港(ほんこん)11・5%などアジア諸国の割合は低かったです。
3番目が「宗教による対立」で、278人、29・9%が選びました。ベルギーが50・0%(12人中6人)、次にインドネシアが49・2%(63人中31人)。日本でそれほど重視されないと感じる宗教問題も、海外では関心が高いことが分かりました。
「核兵器」は244人、26・2%でした。「国同士の不信感」(231人、24・8%)「貧困」(218人、23・4%)が続きました。(中3上岡弘実)
自分自身ができることは?
身近なところから平和発信
回答者の多くが「身近なところから平和を発信したい」と答えました。ジャンボリーという国際的な場での回答としては少し意外でしたが、スカウトたちが自分の住む地域で活動を続けているからこその意見だという印象を受けました。
アフリカ南部のスワジランドから参加した16歳男子は「平和という言葉の意味を周りに伝えたい」と回答。英国の15歳女子は「原爆がいかに恐ろしいかを他の人たちに知らせる」と書き、広島で多くを学んだことがうかがわれました。「他人に寛容(かんよう)になる」「スカウトを続けること」とする人も国を問わず目立ちました。
私たちジュニアライターも、被爆者の体験を取材し記事を書くことで、平和の大切さを伝えていきたいです。(中2鬼頭里歩)
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折り鶴でモザイクアート
私たちは、スカウトの皆(みな)さんに、折(お)り鶴(づる)に平和のメッセージを書いてもらい、それを使ってモザイクアートを作りました。英語で話しかけるのはとても緊張(きんちょう)したのですが、スカウトたちはこちらの不慣れな英語を理解して、快く受け入れて書いてくれました。
欧米(おうべい)や中東、アジアなど多くの人から平和のメッセージをもらいました。鶴には「smile」や「love」などの言葉が多く書かれ、平和になってほしいという思いが伝わってきました。タイ語やスペイン語、漢字もあります。メッセージ入りの折り鶴と一緒(いっしょ)に、たくさんの笑顔を撮(と)らせてもらいました。
モザイクアートは、広島から世界へ平和が広がっていくようにイメージして作り上げました。世界のスカウトの思いとともに、平和が世界へ伝わっていってほしいです。(中2溝上藍)
今回のピース・シーズは、高3河野新大、高2岩田壮、岡田春海、新本悠花、アリエル・ドゥタンプル、二井谷栞、鼻岡舞子、松尾敢太郎、山下未来、高1小林薫、見崎麻梨菜、溝上希、山田千秋、山本菜々穂、中3岩田央、上岡弘実、岡田輝海、岡田実優、中川碧、中2川岸言統、鬼頭里歩、平田佳子、藤井志穂、溝上藍、中1伊藤淳仁、フィリックス・ウォルシュ、川岸言織、斉藤幸歩、目黒美貴が担当しました。
(2015年8月13日朝刊掲載)
今回のアンケートはさまざまな国籍の同年代の若者1000人に対して行いました。これほど膨大なアンケート調査をしたのはジュニアライター6年目で初の経験です。世界の若者の間にも核兵器や差別、環境破壊などに対するさまざまな考え方があることを十分知ることが、平和に向けての一歩だと改めて感じました。(河野)
私はアンケートの集計をして、世界中の若者が人種差別やテロリズムを未だに地球上の重大な問題だと思っていることを改めて実感しました。自分も広い視野を持ち、みんなと助け合って生きていけるように、たくさんの国々の人々と交流を深めていきたいです。(岩田壮)
広島国際会議場にはたくさんの国のボーイスカウトがいました。初めて会う国の人や、国旗を見ても国名がわからない人もいましたが、話してみると言いたいことを割と相手に伝えることができました。つたない英語でもコミュニケーションがとれることがわかり、とてもうれしかったです。(岡田春)
外国の人と話したことが少なかったので、今回の活動では自分の英語力のなさが分かりました。なかなか話しかけに行くことが出来ず苦労してアンケートを集めました。ボーイスカウトの人はとても親しくしてくれました。私が英語を理解出来ないときに、ジェスチャーを交えて自分の意見を伝えてくれたのでうれしかったです。(新本)
主にフランス語の回答の英訳と、手書き回答の打ち込みをやりました。交換留学生で、平和奨学生でジュニアライターの私にとって平和や核兵器、若者に何ができるかを考える機会が多くあります。これまで世界中の他の若者のグローバルな考えや意見を知りませんでした。がっかりするような回答もありましたが、感動的な回答もありました。たくさんのことを学べました。(アリエル)
インドの女の子に、折り鶴にメッセージを書いてもらうよう、英語でお願いしました。私の知らない言葉で質問されましたが、そのまま会話を続けると、気持ちが通じました。言語の壁を越え、表情をじっくり見ながら話すのは、会員制交流サイト(SNS)で会話することより、ずっと楽しかったです。(二井谷)
今回の取材にあまり参加できなかったのがとても残念です。集計を見ると、自分より年下の人も多く、この人たちが各国に戻っても平和を願っていると思うとうれしくなりました。会場では、スカウトたちが国を超えて言葉をかわしていて印象的でした。私もこれからもっと積極的にいろんな国の人と意見交換したいです。(鼻岡舞)
広島国際会議場内は、ずっと英語が飛び交っていました。あらゆる国から来た同世代と英語で会話ができました。 会場を見渡すと、時間をかけて真剣にアンケートに回答しているスカウトが多く目にとまりました。同世代が平和について真剣に考えているように見えて安心したと同時に、もっと話してみたいと強く感じました。(松尾)
予想以上にボーイスカウトの参加国が多く、驚きを隠せませんでした。会場は異空間で、まるで外国にいるようでした。交流した中で特に印象に残ったのはロシア人です。英語はあまり話せないと言いながら、積極的に英語を話しチャレンジする彼らの姿に感銘を受けました。私も自分の英語力には自信がありませんが、彼らのように恥ずかしがらず挑戦したいと感じました。(山下)
英語の発音がうまくできなかったので相手の目を見ながら見振り手振りで説明するとうなづきながら聞いてくれました。質問された時、全くリスニングができなくて答えられなくてとても悔しかったです。でもアドリブで話せたときは本当にうれしかったです。スカウトの人たちが笑顔で「thank you」と言ってくれたときは勇気を出してよかったと思いました。今回の経験は私を一回り以上成長させてくれました。英語の勉強を頑張りたいし、もっと外国の人と触れ合いたいです。(小林)
私は一日だけ参加しました。英語は苦手ですが、思い切って参加者に国名を尋ねると、ちゃんと返事がありました。海外の方と接する機会は少なかったから、この体験は一回だけでしたが、とても貴重だったと思います。アンケートを見ると10代が多くて、平和についてしっかり考えていることに驚かされました。(見崎)
ボーイスカウトの人たちのアンケートを集計した結果、世界的な問題として最も多くの人たちが挙げていたのが人種差別でした。これに対し、核兵器を挙げた人は少なく、原爆の悲惨さを取材してきた私たちとの認識の差を痛感させられました。私はこの事実をしっかりと受け止め、これからもっと世界情勢を学びながら、核兵器の恐ろしさを広く世界の人々に伝えていきたいと思いました。(山田千)
アンケート用紙を渡す時、笑顔で「ありがとう」と言われるとうれしかったです。私もお礼を言う時は笑顔で言わなければと思いました。また、アンケートの質問が私にとっては難しく、よく考えなければ書けないと感じましたが、スカウトの人たちはすらすらと記入していたので、感心しました。(山本)
夏に弱い僕は、今回のボーイスカウトへのアンケート活動ですごい暑さに参ってしまいました。その一方、暑さの中でヒロシマを積極的に学ぼうとする外国人の姿勢に感心しました。気候や言葉の壁などどんな条件の下でも、訪れた土地のことや歴史的事実を吸収しようとする気持ちが大切だと思いました。「夏バテしない体づくり」がこの夏の僕の目標になりました。(岩田央)
初めは、外国人スカウトの人達があまりにも背が高くて大人っぽいので、話しかけるのをためらってしまいました。でも、ふれあっていくうちに、明るくて友好的な人たちだと分かり、声をかけることができるようになりました。話した英語やジェスチャーが通じず、言いたいこと伝えられないこともあって、自分の未熟さを痛感しました。もっと話せるようになりたいです。(上岡)
僕はアンケートの結果をまとめる係でした。質問の答え方など国によって違うなと感じました。チェックの仕方でも丸を囲んだり、ばつをつけたり、線を引いたりといろいろありました。質問に答えていないのもありました。中でも一番困ったのは数字の書き方で、僕には全然解読できませんでした。読めるように、もっと勉強しないといけないなと思いました。(岡田輝)
たくさんの国籍、人種の人たちにアンケートをとることができました。また、びっしり書いてあるアンケート用紙を見て、自分の意見をしっかり持っていて、私も見習おうと思いました。(岡田実)
今回、私は英語にあまり自信がなかったので、ちゃんとコミュニケーションはできるかどうか不安でした。英語が書かれた紙を見ながら話しかけると、見せてほしいと言われ、熱心に読んでくれました。ちょっと残念でしたが、これからはもっと英語を勉強して、紙を見せなくても外国の人と話ができるように頑張りたいと思います。(中川)
外国人とコミュニケーションをとる体験はなかなかないので、最初は緊張しました。しかし、自分が伝えたいことをジェスチャーで表現すると、外国人のスカウトの人たちは、意味をしっかり読み取ってくれました。とてもうれしかったです。一生懸命にアンケートに記入してくれた人たちや、折り鶴にメッセージを書き込んでくれた人たちを見ていると、平和についてこんなに考えてくれていると感動しました。僕は、もっと多くの人が平和について関心を持ってくれるようにがんばりたいです。(川岸言統)
取材を始めた直後は2メートルぐらいありそうなスカウトの身長の高さに圧倒されていました。しかし、配られたプリントをつたない英語で読み上げていると、笑顔で聞いてくれうれしかったです。また、現地が冬の地域から参加している南半球からのスカウトもいて、あらためて地球は広いと思いました。会場でいろいろな国の参加者が互いに写真を撮影し合っており、国籍や見た目は違っても楽しもうとする姿が印象的でした。このような雰囲気が世界中に広がれば、平和に近づくのではないかと思いました。(鬼頭)
アンケートを回収することが、一番大変でした。みんなに呼び掛ける時、自分のぎこちない英語が相手に伝わっているのか、心の底から心配でした。最初はうまく集められなかったのですが、回数をこなすうち、相手からスムーズに受け取ることができました。最後は達成感にひたりました。(平田)
アンケートを配っていると、「もらっていない」と列を離れて取りにくる人が何人もいました。「自分の平和の考えを書きたいから」という意欲的な言葉に驚いたのを覚えています。私だったらわざわざ取りに戻る勇気はありません。そもそも「平和のアンケート」なんて難しそうなもの、受け取らずに通り過ぎる気がします。自分の後ろ向きな考えに気付かされ、恥ずかしくなりました。(藤井)
私はスカウトに折り鶴に平和のメッセージを書いてもらいました。発音が悪くてこちらの意思が伝わらないこともありましたが、ジェスチャーや熱意で分かり合えました。写真を撮らせてもらうときは、日本人には恥ずかしくてできないような笑顔を見せてくれて、私もつられて笑顔になれました。とても疲れたけれど、世界を意識することができました。やりがいがあって楽しかったです。(溝上藍)
世界のスカウトが集う平和活動の場で、新しい友達ができました。僕たちが用意した折りづるに平和へのメッセージを書いてもらうことで、いい関係がつくれたと感じました。多くの人と知り合うことで人生が豊かになります。今回の参加者と、どこかでまた会える機会があるかもしれないと思いました。(ウォルシュ)
ボーイスカウトの人たちを取材した最初の日は、英語が分からないので「話しかけられたらどうしよう」という気持ちでした。でも、折り鶴にメッセージを書くときはすぐに応えてくれ、折り鶴を手に持って写真を撮るときも笑顔で接してくれました。 アンケートを配る時は、多くの人が受け取ってくれました。でも回収する時は、書いていない人が多く千枚以上集めるのに3日もかかりました。何とか目標を達成できたのでほっとしました。ジュニアライターが元気に呼びかけをしたからです。3日間で本当に疲れましたが、みんなが頑張っていたので、自分も励まされました。(川岸言織)
折り鶴を手に笑顔の写真を撮る担当をしました。いろいろな国から来た人がいて言葉も違い、どう接すればよいのか戸惑いました。でも、折り鶴に書かれた「PEACE」「平和」などのメッセージを見て、思いは世界共通であることが分かり、うれしくなりました。(目黒)
平和記念公園を巡り、原爆資料館を見学したり被爆体験記の朗読を聞いたりしたスカウトたち。丁寧(ていねい)に書き込まれたアンケート用紙からは、国籍(こくせき)や性別、年齢(ねんれい)にかかわらず、原爆資料館の被爆者の写真や遺品が想像以上に悲惨(ひさん)でショックを受けた様子や、核兵器への嫌悪感(けんおかん)が伝わってきました。
スカウトたちには、折った鶴に平和に関するメッセージを書いてもらい、写真を撮(と)りました。世界中から平和を願う笑顔が集まりました。メッセージ入りの鶴は、モザイクアートにして、平和記念公園内の「原爆の子の像」にささげました。
「折り鶴モザイクアートにご協力してくださったスカウトの皆さん」
[ピース・シーズ] 世界の若者は原爆に衝撃 ジュニアライターがアンケート
紙面イメージはこちら
<ピース・シーズ>
平和や命の大切さをいろんな視点から捉(とら)え、広げていく「種」が「ピース・シーズ」です。世界中に笑顔の花をたくさん咲(さ)かせるため、小学6年から高校3年までの49人が、自らテーマを考え、取材し、執筆(しっぴつ)しています。
核兵器は嫌だ、と思った スカウト1031人アンケート
印象に残ったものは?
被爆者の写真・遺品…心痛む
多くの人が、原爆資料館の展示物が印象に残った、と答えています。被爆者のやけどの写真や、人の影の残った石段、遺品、溶(と)けたガラスなどです。「あまりにも恐(おそ)ろしく感情に訴(うった)えかけるので吐(は)き気がしました」と英国の16歳女子は答えました。鶴を折りながら亡くなった佐々木禎子(さだこ)さんの話を挙げた人もいました。
被爆証言も多くの人たちの心に残ったようです。ドイツから来た17歳女子は「原爆投下について教科書で習っただけの者にとって、被爆証言の朗読を聞くことは、より心に訴えかけ、深く理解するのに役立った」と回答しています。
他にも、原爆の惨禍(さんか)から復興を果たした広島の人々に感銘(かんめい)を受けたという人や、核兵器に対する嫌悪(けんお)の気持ちが強まったという人がいました。
原爆の投下に関する意見を記している人もいました。ブラジルの14歳男子は「米国が原爆の実験のために攻撃したことを恥(はじ)と感じる」と書いています。一方、米国の15歳男子からは「核兵器は極限状態でない限り使われるべきでない」という、保持に肯定的な意見が出るなど、違(ちが)いも。ボスニア・ヘルツェゴビナから来た17歳男子は「(展示を見て)悲しかったが、これまで繰り返されていない点では希望も感じた」と答えていました。(高2二井谷栞)
原爆・核兵器への認識は?
「戦争終えるため」違った
原爆の威力(いりょく)が予想以上でショックだった、というスカウトが目立ちました。英国の16歳男子は、原爆とホロコースト(ユダヤ人大虐殺(ぎゃくさつ))を重ね「残虐(ざんぎゃく)行為。衝撃的(しょうげきてき)だった」と書いています。
メキシコの16歳男子は「戦争を終わらせるために原爆が必要だったと思っていたが、今、ほかに平和的な方法があると分かった」と、考えの変化を記します。「ここを訪れて、核兵器の破壊的な影響(えいきょう)について、考えがより強まった」(ドイツ17歳女子)という答えもありました。
政府の立場を表しているような意見もありました。オーストリアの16歳男子は「大量破壊(はかい)兵器は平和をもたらさない。戦争だけだ」。一方、米国の16歳男子は「核兵器は決して使ってはならず、抑止(よくし)力としての使い方が正しい」という対照的な回答でした。
これからももっと多くの人に広島を訪れてもらい、原爆の恐ろしさを知り、核兵器や戦争、平和について考える人が増えてほしいです。(中3中川碧)
平和を阻んでいるものは?
「テロ」最多 「人種差別」続く
13項目から三つまで選んでもらいました。最も多かったのが「テロ」で、382人。アンケートに答えた人のうち約4割が選んでいます。回答者が10人以上の25カ国・地域ごとに見ると、トルコが75・0%と最も高く、12人中9人が選んでいました。ベルギー66・7%、オランダ57・6%と続きます。テロが世界中の若い人にも注目されていました。
次に多かったのが「人種差別」。334人と35・9%いました。ポルトガルは回答者14人中9人が選び64・3%、次いでコロンビアが63・6%(11人中7人)でした。一方、カンボジア0%、香港(ほんこん)11・5%などアジア諸国の割合は低かったです。
3番目が「宗教による対立」で、278人、29・9%が選びました。ベルギーが50・0%(12人中6人)、次にインドネシアが49・2%(63人中31人)。日本でそれほど重視されないと感じる宗教問題も、海外では関心が高いことが分かりました。
「核兵器」は244人、26・2%でした。「国同士の不信感」(231人、24・8%)「貧困」(218人、23・4%)が続きました。(中3上岡弘実)
自分自身ができることは?
身近なところから平和発信
回答者の多くが「身近なところから平和を発信したい」と答えました。ジャンボリーという国際的な場での回答としては少し意外でしたが、スカウトたちが自分の住む地域で活動を続けているからこその意見だという印象を受けました。
アフリカ南部のスワジランドから参加した16歳男子は「平和という言葉の意味を周りに伝えたい」と回答。英国の15歳女子は「原爆がいかに恐ろしいかを他の人たちに知らせる」と書き、広島で多くを学んだことがうかがわれました。「他人に寛容(かんよう)になる」「スカウトを続けること」とする人も国を問わず目立ちました。
私たちジュニアライターも、被爆者の体験を取材し記事を書くことで、平和の大切さを伝えていきたいです。(中2鬼頭里歩)
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折り鶴でモザイクアート
私たちは、スカウトの皆(みな)さんに、折(お)り鶴(づる)に平和のメッセージを書いてもらい、それを使ってモザイクアートを作りました。英語で話しかけるのはとても緊張(きんちょう)したのですが、スカウトたちはこちらの不慣れな英語を理解して、快く受け入れて書いてくれました。
欧米(おうべい)や中東、アジアなど多くの人から平和のメッセージをもらいました。鶴には「smile」や「love」などの言葉が多く書かれ、平和になってほしいという思いが伝わってきました。タイ語やスペイン語、漢字もあります。メッセージ入りの折り鶴と一緒(いっしょ)に、たくさんの笑顔を撮(と)らせてもらいました。
モザイクアートは、広島から世界へ平和が広がっていくようにイメージして作り上げました。世界のスカウトの思いとともに、平和が世界へ伝わっていってほしいです。(中2溝上藍)
今回のピース・シーズは、高3河野新大、高2岩田壮、岡田春海、新本悠花、アリエル・ドゥタンプル、二井谷栞、鼻岡舞子、松尾敢太郎、山下未来、高1小林薫、見崎麻梨菜、溝上希、山田千秋、山本菜々穂、中3岩田央、上岡弘実、岡田輝海、岡田実優、中川碧、中2川岸言統、鬼頭里歩、平田佳子、藤井志穂、溝上藍、中1伊藤淳仁、フィリックス・ウォルシュ、川岸言織、斉藤幸歩、目黒美貴が担当しました。
(2015年8月13日朝刊掲載)
今回のアンケートはさまざまな国籍の同年代の若者1000人に対して行いました。これほど膨大なアンケート調査をしたのはジュニアライター6年目で初の経験です。世界の若者の間にも核兵器や差別、環境破壊などに対するさまざまな考え方があることを十分知ることが、平和に向けての一歩だと改めて感じました。(河野)
私はアンケートの集計をして、世界中の若者が人種差別やテロリズムを未だに地球上の重大な問題だと思っていることを改めて実感しました。自分も広い視野を持ち、みんなと助け合って生きていけるように、たくさんの国々の人々と交流を深めていきたいです。(岩田壮)
広島国際会議場にはたくさんの国のボーイスカウトがいました。初めて会う国の人や、国旗を見ても国名がわからない人もいましたが、話してみると言いたいことを割と相手に伝えることができました。つたない英語でもコミュニケーションがとれることがわかり、とてもうれしかったです。(岡田春)
外国の人と話したことが少なかったので、今回の活動では自分の英語力のなさが分かりました。なかなか話しかけに行くことが出来ず苦労してアンケートを集めました。ボーイスカウトの人はとても親しくしてくれました。私が英語を理解出来ないときに、ジェスチャーを交えて自分の意見を伝えてくれたのでうれしかったです。(新本)
主にフランス語の回答の英訳と、手書き回答の打ち込みをやりました。交換留学生で、平和奨学生でジュニアライターの私にとって平和や核兵器、若者に何ができるかを考える機会が多くあります。これまで世界中の他の若者のグローバルな考えや意見を知りませんでした。がっかりするような回答もありましたが、感動的な回答もありました。たくさんのことを学べました。(アリエル)
インドの女の子に、折り鶴にメッセージを書いてもらうよう、英語でお願いしました。私の知らない言葉で質問されましたが、そのまま会話を続けると、気持ちが通じました。言語の壁を越え、表情をじっくり見ながら話すのは、会員制交流サイト(SNS)で会話することより、ずっと楽しかったです。(二井谷)
今回の取材にあまり参加できなかったのがとても残念です。集計を見ると、自分より年下の人も多く、この人たちが各国に戻っても平和を願っていると思うとうれしくなりました。会場では、スカウトたちが国を超えて言葉をかわしていて印象的でした。私もこれからもっと積極的にいろんな国の人と意見交換したいです。(鼻岡舞)
広島国際会議場内は、ずっと英語が飛び交っていました。あらゆる国から来た同世代と英語で会話ができました。 会場を見渡すと、時間をかけて真剣にアンケートに回答しているスカウトが多く目にとまりました。同世代が平和について真剣に考えているように見えて安心したと同時に、もっと話してみたいと強く感じました。(松尾)
予想以上にボーイスカウトの参加国が多く、驚きを隠せませんでした。会場は異空間で、まるで外国にいるようでした。交流した中で特に印象に残ったのはロシア人です。英語はあまり話せないと言いながら、積極的に英語を話しチャレンジする彼らの姿に感銘を受けました。私も自分の英語力には自信がありませんが、彼らのように恥ずかしがらず挑戦したいと感じました。(山下)
英語の発音がうまくできなかったので相手の目を見ながら見振り手振りで説明するとうなづきながら聞いてくれました。質問された時、全くリスニングができなくて答えられなくてとても悔しかったです。でもアドリブで話せたときは本当にうれしかったです。スカウトの人たちが笑顔で「thank you」と言ってくれたときは勇気を出してよかったと思いました。今回の経験は私を一回り以上成長させてくれました。英語の勉強を頑張りたいし、もっと外国の人と触れ合いたいです。(小林)
私は一日だけ参加しました。英語は苦手ですが、思い切って参加者に国名を尋ねると、ちゃんと返事がありました。海外の方と接する機会は少なかったから、この体験は一回だけでしたが、とても貴重だったと思います。アンケートを見ると10代が多くて、平和についてしっかり考えていることに驚かされました。(見崎)
ボーイスカウトの人たちのアンケートを集計した結果、世界的な問題として最も多くの人たちが挙げていたのが人種差別でした。これに対し、核兵器を挙げた人は少なく、原爆の悲惨さを取材してきた私たちとの認識の差を痛感させられました。私はこの事実をしっかりと受け止め、これからもっと世界情勢を学びながら、核兵器の恐ろしさを広く世界の人々に伝えていきたいと思いました。(山田千)
アンケート用紙を渡す時、笑顔で「ありがとう」と言われるとうれしかったです。私もお礼を言う時は笑顔で言わなければと思いました。また、アンケートの質問が私にとっては難しく、よく考えなければ書けないと感じましたが、スカウトの人たちはすらすらと記入していたので、感心しました。(山本)
夏に弱い僕は、今回のボーイスカウトへのアンケート活動ですごい暑さに参ってしまいました。その一方、暑さの中でヒロシマを積極的に学ぼうとする外国人の姿勢に感心しました。気候や言葉の壁などどんな条件の下でも、訪れた土地のことや歴史的事実を吸収しようとする気持ちが大切だと思いました。「夏バテしない体づくり」がこの夏の僕の目標になりました。(岩田央)
初めは、外国人スカウトの人達があまりにも背が高くて大人っぽいので、話しかけるのをためらってしまいました。でも、ふれあっていくうちに、明るくて友好的な人たちだと分かり、声をかけることができるようになりました。話した英語やジェスチャーが通じず、言いたいこと伝えられないこともあって、自分の未熟さを痛感しました。もっと話せるようになりたいです。(上岡)
僕はアンケートの結果をまとめる係でした。質問の答え方など国によって違うなと感じました。チェックの仕方でも丸を囲んだり、ばつをつけたり、線を引いたりといろいろありました。質問に答えていないのもありました。中でも一番困ったのは数字の書き方で、僕には全然解読できませんでした。読めるように、もっと勉強しないといけないなと思いました。(岡田輝)
たくさんの国籍、人種の人たちにアンケートをとることができました。また、びっしり書いてあるアンケート用紙を見て、自分の意見をしっかり持っていて、私も見習おうと思いました。(岡田実)
今回、私は英語にあまり自信がなかったので、ちゃんとコミュニケーションはできるかどうか不安でした。英語が書かれた紙を見ながら話しかけると、見せてほしいと言われ、熱心に読んでくれました。ちょっと残念でしたが、これからはもっと英語を勉強して、紙を見せなくても外国の人と話ができるように頑張りたいと思います。(中川)
外国人とコミュニケーションをとる体験はなかなかないので、最初は緊張しました。しかし、自分が伝えたいことをジェスチャーで表現すると、外国人のスカウトの人たちは、意味をしっかり読み取ってくれました。とてもうれしかったです。一生懸命にアンケートに記入してくれた人たちや、折り鶴にメッセージを書き込んでくれた人たちを見ていると、平和についてこんなに考えてくれていると感動しました。僕は、もっと多くの人が平和について関心を持ってくれるようにがんばりたいです。(川岸言統)
取材を始めた直後は2メートルぐらいありそうなスカウトの身長の高さに圧倒されていました。しかし、配られたプリントをつたない英語で読み上げていると、笑顔で聞いてくれうれしかったです。また、現地が冬の地域から参加している南半球からのスカウトもいて、あらためて地球は広いと思いました。会場でいろいろな国の参加者が互いに写真を撮影し合っており、国籍や見た目は違っても楽しもうとする姿が印象的でした。このような雰囲気が世界中に広がれば、平和に近づくのではないかと思いました。(鬼頭)
アンケートを回収することが、一番大変でした。みんなに呼び掛ける時、自分のぎこちない英語が相手に伝わっているのか、心の底から心配でした。最初はうまく集められなかったのですが、回数をこなすうち、相手からスムーズに受け取ることができました。最後は達成感にひたりました。(平田)
アンケートを配っていると、「もらっていない」と列を離れて取りにくる人が何人もいました。「自分の平和の考えを書きたいから」という意欲的な言葉に驚いたのを覚えています。私だったらわざわざ取りに戻る勇気はありません。そもそも「平和のアンケート」なんて難しそうなもの、受け取らずに通り過ぎる気がします。自分の後ろ向きな考えに気付かされ、恥ずかしくなりました。(藤井)
私はスカウトに折り鶴に平和のメッセージを書いてもらいました。発音が悪くてこちらの意思が伝わらないこともありましたが、ジェスチャーや熱意で分かり合えました。写真を撮らせてもらうときは、日本人には恥ずかしくてできないような笑顔を見せてくれて、私もつられて笑顔になれました。とても疲れたけれど、世界を意識することができました。やりがいがあって楽しかったです。(溝上藍)
世界のスカウトが集う平和活動の場で、新しい友達ができました。僕たちが用意した折りづるに平和へのメッセージを書いてもらうことで、いい関係がつくれたと感じました。多くの人と知り合うことで人生が豊かになります。今回の参加者と、どこかでまた会える機会があるかもしれないと思いました。(ウォルシュ)
ボーイスカウトの人たちを取材した最初の日は、英語が分からないので「話しかけられたらどうしよう」という気持ちでした。でも、折り鶴にメッセージを書くときはすぐに応えてくれ、折り鶴を手に持って写真を撮るときも笑顔で接してくれました。 アンケートを配る時は、多くの人が受け取ってくれました。でも回収する時は、書いていない人が多く千枚以上集めるのに3日もかかりました。何とか目標を達成できたのでほっとしました。ジュニアライターが元気に呼びかけをしたからです。3日間で本当に疲れましたが、みんなが頑張っていたので、自分も励まされました。(川岸言織)
折り鶴を手に笑顔の写真を撮る担当をしました。いろいろな国から来た人がいて言葉も違い、どう接すればよいのか戸惑いました。でも、折り鶴に書かれた「PEACE」「平和」などのメッセージを見て、思いは世界共通であることが分かり、うれしくなりました。(目黒)