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連載・特集

緑地帯 熊澤雅樹 室内楽へのいざない①

 私は広島交響楽団の一員として演奏会に出演するほか、室内楽(アンサンブル)の魅力を伝えたいと、仲間の演奏家と一緒に活動している。室内楽は宮廷の広間で演奏された音楽が語源で、少人数による演奏のことを指す。みなさんは、どのようなイメージを抱くだろうか。「指揮者がいないので音を合わせるのが難しそう」「演奏者が少ないから個々の技量が問われる」…。いずれも正解だ。

 音楽との最初の出会いは、母のおなかの中だった。北海道南西部の日本海に面した江差町生まれ。工業高校の電気科教諭だった父はバイオリンとビオラを弾き、指揮もするという熱烈な音楽愛好家。家にはいつも自然と音楽が流れている環境だった。札幌へ転居後、9歳でチェロをはじめた。ジュニアオーケストラに入ってわいわい演奏し、「オケって楽しいなあ」と思ったのが今の仕事の原点となった。室内楽との出会いは13歳の時。生徒・学生向けの音楽セミナーに参加する機会を得、プロの演奏家による室内楽を聴いて圧倒され、ひたすら憧れた。

 桐朋学園大のアンサンブルディプロマコースを修了後、ドイツと日本で音楽の勉強とフリーの演奏活動を続けた。35歳でご縁を頂いて広響に入団。「いつかオーケストラに入り、地域に根差して室内楽をしたい」という長年の夢が実現した。少年時代から追い求める室内楽の魅力を、連載を通じてみなさんに少しでもお伝えできればと願う。(くまざわ・まさき 広島交響楽団チェロ奏者=広島市)

(2021年5月25日朝刊掲載)

緑地帯 熊澤雅樹 室内楽へのいざない②

緑地帯 熊澤雅樹 室内楽へのいざない③

緑地帯 熊澤雅樹 室内楽へのいざない④

緑地帯 熊澤雅樹 室内楽へのいざない⑤

緑地帯 熊澤雅樹 室内楽へのいざない⑥

緑地帯 熊澤雅樹 室内楽へのいざない⑦

緑地帯 熊澤雅樹 室内楽へのいざない⑧

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