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連載・特集

渋沢栄一と岡山 <4> 友好の人形

米からの贈り物 橋渡し

 愛くるしい子どもたちの笑顔があふれる浅口市金光町の金光学園こども園。園長室には、94年前に米国から贈られた人形「ベッシーちゃん」がケースに入って飾られている。当時、日本各地へ贈られた約1万2千体のうちの1体である。

 ベッシーちゃんは身長40センチ。黒い帽子と茶色っぽい服を身に着ける。毎日、園長室である出席報告の時間には、ほほ笑みかける園児の姿も。みんなの前で披露される年中行事でも園児たちは目を輝かせる。

 金光学園幼稚園創立100周年記念誌や金光町史だよりによると、ベッシーちゃんは1927年、日米関係の悪化を憂いた米国の宣教師で学者のシドニー・ギューリック博士が、友好の願いを込めて始めたドールプロジェクトで贈られた。寄贈には、日本国際児童親善会の会長を務めた渋沢栄一が協力したと伝わる。

 太平洋戦争時には、人形を焼いた施設もあったという。同園の神田繁雄園長(72)は「よく焼かれずに残っていた。慈愛や思いやりを尊ぶ当園の心が大切に守ったのでは」と当時に思いを巡らす。2004年には博士の孫から妹として「オードリーちゃん」が贈られた。姉妹の人形がそろっているのは同園だけという。

 ともに6歳の金光征爾(せいじ)ちゃんと井上璃乃(りの)ちゃんが神田園長と人形をのぞき込み「かわいいね」とほほ笑む。ベッシーちゃんは、これからも園児の成長を見守り続ける。(谷本和久)

(2021年8月19日朝刊掲載)

渋沢栄一と岡山 <1> 企画展

渋沢栄一と岡山 <2> 校内の墨書

渋沢栄一と岡山 <3> PR列車

渋沢栄一と岡山 <5> NHK岡山放送局

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