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連載・特集

ふたりの被爆画学生展 <上> 手島守之輔「女性の顔」

簡素なタッチ 愛情表現

 広島と長崎で被爆して亡くなった画学生2人の企画展「無言館所蔵作品による ふたりの被爆画学生展―手島守之輔・伊藤守正―」が、尾道市瀬戸田町の平山郁夫美術館で開かれている。それぞれの絵画と、同時に展示する平山郁夫の作品を、幸野昌賢学芸員に解説してもらう。

 長野県上田市の無言館には、約130人の戦没画学生の作品が所蔵されている。原爆によって命を失ったのは2人。今回は彼らの作品を展示している。

 手島守之輔は1914年、竹原市に生まれた。東京美術学校(現東京芸術大)油画科に入学し、在学中から新制作派協会展にたびたび出品した。

 卒業後に結婚して実家に戻り、中学校の美術教師をしていた45年8月1日に突然の臨時召集を受ける。広島で被爆したのはその5日後だった。翌日、守之輔の父は広島市内まで歩き、病院で瀕死(ひんし)の息子を見つけた。守之輔の部隊は、爆心地からわずか1・1キロにいたという。

 「女性の顔」は簡素なタッチで描かれ、対象への限りない愛情が見て取れる。原爆は、限られた時間の中にあって、もっと描きたいという願いや情熱を一瞬にして奪い去ってしまった。

 <メモ>企画展は7月22日まで。平山郁夫美術館と中国新聞備後本社主催。会期中無休。一般920円、高大生410円、小中学生210円。同館☎0845(27)3800。

(2022年6月30日朝刊掲載)

ふたりの被爆画学生展 <上> 手島守之輔「女性の顔」

ふたりの被爆画学生展 <下> 平山郁夫「アンコールワット遺跡 朝陽」1992年

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