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連載・特集

ふたりの被爆画学生展 <下> 平山郁夫「アンコールワット遺跡 朝陽」1992年

平和な世界 希求の旅路

 平山郁夫は中学3年のときに広島市内で被爆し、生涯を通じて平和の祈りを込めて絵を描き続けた。

 シルクロードを旅する中で、戦乱等によって文化財が破壊されているのを目の当たりにした平山は、文化財保護を通じて世界の平和に貢献する活動を行う。ポル・ポト派による内戦が終わりつつあった1991年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)からの依頼を受けてカンボジアのアンコールワット遺跡を調査し、人材育成を中心に文化財保護活動に携わった。

 「私が、こうした遺跡や文化財をわれわれの手で後世に残さなくてはならないと考えたのも、絵のテーマと同様、平和な世界を望む気持ちから生まれたものです。歴史の生きた証人である遺跡や文化財を守ることは、平和の象徴にほかなりません」という言葉が残る。平山を突き動かしたのは、原爆で失った学友たちへの鎮魂の思いだった。(平山郁夫美術館学芸員・幸野昌賢)

 <メモ>「無言館所蔵作品による ふたりの被爆画学生展―手島守之輔・伊藤守正―」(中国新聞備後本社など主催)は、尾道市瀬戸田町の平山郁夫美術館で22日まで。会期中無休。一般920円、高大生410円、小中学生210円。同館☎0845(27)3800。

(2022年7月2日朝刊掲載)

ふたりの被爆画学生展 <上> 手島守之輔「女性の顔」

ふたりの被爆画学生展 <中> 伊藤守正「伐折羅大将」

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