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日米首脳会談【解説】核廃絶の原点 忘れるな

 岸田文雄首相は先進7カ国(G7)歴訪で、対中国やロシアを念頭に置いた軍事的結束をアピールした。その一方、地元広島市で5月に開くG7首脳会議(サミット)に向けては、核兵器廃絶への発信は鳴りを潜め、物足りなさが残る。被爆地広島選出の首相として核兵器廃絶へと国際世論をリードする原点に立ち返るべきだ。

 広島サミットを「核なき世界を目指す国際的機運を再び盛り上げる大きな転換点」と位置付ける首相。外遊に当たって多くの国民が望んだのはサミットの地ならしとして、核保有国を含む首脳から核廃絶の共通認識を得ることだろう。原爆資料館訪問と被爆者との面会を打診するかどうかも焦点だった。

 首相は核軍縮・不拡散を広島サミットの議題とすることに関しG7首脳の支持を得たものの、原爆資料館訪問と被爆者との面会には言及しなかったという。一体どうしたことか。

 英国のスナク首相とは自衛隊と英軍部隊の共同訓練を推進する協定に署名。米国のバイデン大統領とは日米同盟の抑止力を強める重要性を確認した。「軍備増強の行き着く先が核兵器の使用ではないか」。広島で懸念の声が漏れて当然だ。

 防衛力強化をことさら打ち出すばかりでは軍拡競争を招き、首相がライフワークとする「核なき世界」の実現は遠のきはしまいか。対話で軍事衝突を回避する外交努力が欠かせない。

 広島サミット開催を決めた昨年5月、首相はこう説いた。「広島ほど平和へのコミットメント(関与)を示すのにふさわしい場所はない」と。G7の軍事的な結束を確認する場にするようなら、国民の期待は一瞬にして失望に変わる。岸田外交の本質がいま問われているのではないか。(ワシントン中川雅晴)

(2023年1月15日朝刊掲載)

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