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今井政之さん死去 陶芸家 面象嵌を確立 92歳

 文化勲章を受章した陶芸家で、竹原市に窯を構えた今井政之(いまい・まさゆき)さんが6日午前10時10分、老衰のため、京都市内の病院で死去した。92歳。面象嵌(ぞうがん)と呼ばれる技法を打ち立て、陶芸界の第一線を歩んだ。通夜は8日午後6時から京都市南区西九条池ノ内町60の公益社南ブライトホールで。葬儀・告別式は9日午後0時半から同ホールで。喪主は長男眞正(まきまさ)さん。葬儀委員長は金属工芸家で前文化庁長官の宮田亮平さん。

 1930年大阪市生まれ。第2次世界大戦中の43年に父の古里の竹原市に疎開した。広島県立竹原工業学校(現竹原高)を卒業後、岡山で備前焼の修業を積んだ。こけむしたような質感の釉薬(ゆうやく)「苔泥彩(たいでいさい)」を開発するなど独自の作風を深め、69年、象嵌技法を器の広い面に施す面象嵌の手法を確立。自身の創作の代名詞となった。

 78年、竹原市に竹原豊山窯(ほうざんがま)を構え、晩年まで自宅のある京都と行き来し創作を続けた。瀬戸内海に親しんだ少年時代を原点に、生き生きとした魚などの動植物を皿やつぼに表現した。2003年日本芸術院会員、11年文化功労者。09年に旭日中綬章、18年に文化勲章を受章した。日展顧問も務めた。広島県名誉県民、竹原市名誉市民など。

 被爆地・広島にも思いを寄せた。原爆投下時、竹原市内の工場に学徒動員され、空が光るのを見た。プラハ演説をした米オバマ元大統領に共鳴し、10年、原爆ドームや鶴を面象嵌であしらった陶額を贈った。後進の育成にも力を注ぎ、多くの門下生を輩出した。 (福田彩乃)

(2023年3月7日朝刊掲載)

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