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核禁会議【解説】 日本政府の責任どこに

 建前ではない、真に核兵器廃絶を目指す議論が被爆国政府不在の議場で続く。日本の幅広い世代の市民や研究者も次々と発言する。核兵器禁止条約の第3回締約国会議で浮き彫りになったのは、本来議論を主導すべき日本政府の責任放棄に等しい姿勢だ。

 広島と長崎の被爆者や首長、市民が粘り強く働きかけたにもかかわらず、日本政府は今回もオブザーバー参加を拒んだ。1945年末までだけで広島で推計14万人、長崎で7万人の命を奪った無差別殺傷兵器に、国の安全保障を頼る核抑止政策を採り続けているからにほかならない。

 ただ今回は、NATOの加盟国がそろってオブザーバー参加を見送ったことがとりわけ会議に水を差した。参加予定だったノルウェーも結局姿を見せなかった。

 ロシアによるウクライナ侵攻への対応で欧州と米国の間であつれきが生じ、NATOが結束を優先したのが大きく影響したとみられる。とはいえ、不参加は短期的な判断だけではなく、根底にはやはり核抑止への依存がある。

 条約推進の課題も多そうだ。核実験などの被害者の援助と環境修復のための国際信託基金は来年の検討会議で設立できるのかが問われる。条約の具現化の試金石になるからだ。核兵器保有国が条約参加を決断した場合などに必要な、核放棄を検証する手段もまだまだ議論が要る。

 条約を育てていく道のりは長い。核兵器に頼り続けることがいかに危険極まりないかを詳細に明らかにすべく、科学的な知見も幅広く動員し、核抑止依存という廃絶への最大の障害を乗り越える意思も今会議で再確認された。被爆地も辛抱強く行動したい。 (ニューヨーク金崎由美)

(2025年3月9日朝刊掲載)

核廃絶へ「揺るぎない決意」 核禁会議 宣言採択し閉幕

[核兵器禁止条約 第3回締約国会議] 成果と課題聞く

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