[核兵器禁止条約 第3回締約国会議] 成果と課題聞く
25年3月10日
米ニューヨークの国連本部で7日まで5日間にわたり開かれた核兵器禁止条約の第3回締約国会議。政府側で議論を取り仕切ったアカン・ラフメトゥリン議長(カザフスタン)と、非政府組織(NGO)側の中心となった「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))のメリッサ・パーク事務局長にそれぞれ成果と今後の課題を尋ねた。(聞き手はニューヨーク金崎由美)
締約国結束 検討会議へ力に
今回の会議で、締約国は強く結束した。核兵器廃絶に向けた行動をさらに進めていく。
核の被害者援助と環境修復に関する合意がなされ、「軍縮とジェンダー」についても重要性を確認するなど、来年の第1回検討会議に向けて強固な土台をつくったと考える。さらに議論を加速させる。
今回、日本はオブザーバー参加をしなかったが、核軍縮と非核化の強力な推進者であるのは論をまたない。一方で、隣国がミサイルを発射したり核実験をしたりした場合、地政学上の脅威に危機感を抱くのは理解できる。
今回の会議の成果に、条約の普遍化に向けた作業の継続がある。ゆっくりだが確実に各国間の信頼醸成を進め、まずは非締約国にオブザーバーとして参加してもらう。次に署名、批准と考えてほしい。核兵器の保有、依存が平和の前提条件ではないことを理解してもらうには、一定の時間と手順が必要だ。
議場で日本の市民の活動が目立った。非常に活動的かつ献身的だ。核実験の被害に苦しむカザフスタンにとっても、痛みや感情を相互に理解できる国だ。市民社会の強さは頼もしく、働きかけを続けることで政府や意思決定者に伝わるはずだ。
条約に加盟し議論けん引を
会議に議場からの発言や関連イベントの企画などを通じて参加した組織は163団体で、うち44団体は初めてだった。日本からも市民や国会議員たちが加わった。市民発の勢いが強まった。
条約の署名国は既に世界の国の約半数を占める。今回、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が会議に背を向けたが、オーストラリアは参加した。同様にNATO非加盟で、米国の「核の傘」の下にいる日本の不参加は非常に残念だ。来年の第1回検討会議には出席を強く求めたい。
ただ、オブザーバー参加はいわゆる「傍聴」。あくまで条約加盟による被爆国の道徳的リーダーシップを求める。日本は原爆被害を経て、貢献できる多くの専門知識を持つ。被害者支援や環境修復に関する議論に加わってもらえれば素晴らしい。だが現状の防衛政策を保持する間は、主導権を握れない。
現在欧州では、パニックになったように核抑止力の強化という無益な議論がなされている。危険を増大させるだけだ。しかも危険を被るのは当事国だけでない。核使用に至れば地球に破滅的な事態を招く。被爆80年となる今、非常に緊迫した時期でもある。だからこそ条約をさらに前に進める行動の機は熟している。
(2025年3月9日朝刊掲載)
核廃絶へ「揺るぎない決意」 核禁会議 宣言採択し閉幕
核禁会議【解説】 日本政府の責任どこに
ラフメトゥリン議長
締約国結束 検討会議へ力に
今回の会議で、締約国は強く結束した。核兵器廃絶に向けた行動をさらに進めていく。
核の被害者援助と環境修復に関する合意がなされ、「軍縮とジェンダー」についても重要性を確認するなど、来年の第1回検討会議に向けて強固な土台をつくったと考える。さらに議論を加速させる。
今回、日本はオブザーバー参加をしなかったが、核軍縮と非核化の強力な推進者であるのは論をまたない。一方で、隣国がミサイルを発射したり核実験をしたりした場合、地政学上の脅威に危機感を抱くのは理解できる。
今回の会議の成果に、条約の普遍化に向けた作業の継続がある。ゆっくりだが確実に各国間の信頼醸成を進め、まずは非締約国にオブザーバーとして参加してもらう。次に署名、批准と考えてほしい。核兵器の保有、依存が平和の前提条件ではないことを理解してもらうには、一定の時間と手順が必要だ。
議場で日本の市民の活動が目立った。非常に活動的かつ献身的だ。核実験の被害に苦しむカザフスタンにとっても、痛みや感情を相互に理解できる国だ。市民社会の強さは頼もしく、働きかけを続けることで政府や意思決定者に伝わるはずだ。
ICANのパーク事務局長
条約に加盟し議論けん引を
会議に議場からの発言や関連イベントの企画などを通じて参加した組織は163団体で、うち44団体は初めてだった。日本からも市民や国会議員たちが加わった。市民発の勢いが強まった。
条約の署名国は既に世界の国の約半数を占める。今回、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が会議に背を向けたが、オーストラリアは参加した。同様にNATO非加盟で、米国の「核の傘」の下にいる日本の不参加は非常に残念だ。来年の第1回検討会議には出席を強く求めたい。
ただ、オブザーバー参加はいわゆる「傍聴」。あくまで条約加盟による被爆国の道徳的リーダーシップを求める。日本は原爆被害を経て、貢献できる多くの専門知識を持つ。被害者支援や環境修復に関する議論に加わってもらえれば素晴らしい。だが現状の防衛政策を保持する間は、主導権を握れない。
現在欧州では、パニックになったように核抑止力の強化という無益な議論がなされている。危険を増大させるだけだ。しかも危険を被るのは当事国だけでない。核使用に至れば地球に破滅的な事態を招く。被爆80年となる今、非常に緊迫した時期でもある。だからこそ条約をさらに前に進める行動の機は熟している。
(2025年3月9日朝刊掲載)
核廃絶へ「揺るぎない決意」 核禁会議 宣言採択し閉幕
核禁会議【解説】 日本政府の責任どこに