NPT準備委 勧告採択できず閉幕【解説】保有国の主体性乏しく
25年5月11日
NPT再検討会議の準備委員会が二つの成果文書を採択できなかった要因に、核軍縮に向けた核兵器保有国の主体性の乏しさがある。互いに非難し合う場面が目立ち、厳しい安全保障環境を核に固執する理由に挙げた。国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石とされるNPTの枠組みでの核兵器廃絶は見通せない。
過去の準備委で勧告を採択した例はなく、今回も開幕前から期待値は高くなかった。アジュマン議長はむしろNPT体制の立て直しへ、核保有国に核戦力や核軍縮の国別報告を求める決定に注力。核抑止をはじめ、対立する論点を根こそぎ削った改訂版を8日に提示し、合意の可能性を探った。内容は薄まったが、「これなら採択できる」と語る外交官もいた。
だが、予想以上に核保有国は後ろ向きだった。第2次トランプ政権下で初の多国間の核軍縮協議に臨んだ米国は不透明な核開発をしているとして中国に批判の矛先を向けた。中国は世界の核兵器の大半を持つ米ロに一義的な核軍縮の責任があると応酬。ロシアは具体的な報告に一貫して消極的だった。
片や、米国の「核の傘」に頼る日本も核抑止の再考を促す記述を問題視。核兵器禁止条約の推進国が核抑止の正当性をただしたのとは対照的だ。
来年の再検討会議で自国の主張に沿った成果を得るため、今回の準備委で譲歩しないという計算が各国に働いた面もある。「残念だ。でも予想通りだ」と非保有国の外交官の一人。核兵器使用の危険性が高まっている―。その脅威を振り払う成果を示せたとは言えない。(ニューヨーク宮野史康)
(2025年5月11日朝刊掲載)
[NPT準備委] 本会議 異例の非公開 各国折り合わず幕切れ 国別報告に意見噴出
[NPT準備委] 勧告採択できず閉幕 体制立て直し案も断念
過去の準備委で勧告を採択した例はなく、今回も開幕前から期待値は高くなかった。アジュマン議長はむしろNPT体制の立て直しへ、核保有国に核戦力や核軍縮の国別報告を求める決定に注力。核抑止をはじめ、対立する論点を根こそぎ削った改訂版を8日に提示し、合意の可能性を探った。内容は薄まったが、「これなら採択できる」と語る外交官もいた。
だが、予想以上に核保有国は後ろ向きだった。第2次トランプ政権下で初の多国間の核軍縮協議に臨んだ米国は不透明な核開発をしているとして中国に批判の矛先を向けた。中国は世界の核兵器の大半を持つ米ロに一義的な核軍縮の責任があると応酬。ロシアは具体的な報告に一貫して消極的だった。
片や、米国の「核の傘」に頼る日本も核抑止の再考を促す記述を問題視。核兵器禁止条約の推進国が核抑止の正当性をただしたのとは対照的だ。
来年の再検討会議で自国の主張に沿った成果を得るため、今回の準備委で譲歩しないという計算が各国に働いた面もある。「残念だ。でも予想通りだ」と非保有国の外交官の一人。核兵器使用の危険性が高まっている―。その脅威を振り払う成果を示せたとは言えない。(ニューヨーク宮野史康)
(2025年5月11日朝刊掲載)
[NPT準備委] 本会議 異例の非公開 各国折り合わず幕切れ 国別報告に意見噴出
[NPT準備委] 勧告採択できず閉幕 体制立て直し案も断念