[NPT準備委] 勧告採択できず閉幕 体制立て直し案も断念
25年5月11日
2026年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けて米ニューヨークの国連本部で開かれていた第3回準備委員会は9日、勧告案の採択を断念し、閉幕した。厳しい国際情勢が影響し、加盟国間の核軍縮を巡る意見の隔たりが大きかった。NPT体制の立て直しに特化した決定にも合意できず、「核兵器のない世界」への前進を見通せぬ結末となった。(ニューヨーク発 宮野史康)
アジュマン議長(ガーナ)は閉会あいさつで「再検討会議に全会一致の勧告を届けられないという流れを断ち切れず残念だ」と述べた。
再検討会議のたたき台となる勧告案は、核兵器の「先制不使用」政策を保有国に促し、核兵器禁止条約を「核兵器のない世界に向けた貢献に留意する」と評価。兵器用核分裂性物質の生産モラトリアム(一時停止)にも触れていた。
ただ、米国は先制不使用の記述の削除を求め、英国は禁止条約の記述に反発。これに対し、禁止条約を推進するオーストリアはNPTとの補完性に言及するよう要求していた。勧告案は全会一致ではなく「議長による勧告」と位置付け直し、合意に基づかない作業文書として記録に残す。
アジュマン議長が重視したNPT体制の強化に関する決定事項案も採択できなかった。「再検討プロセスの強化」と題し、核保有国に核戦力や核軍縮の取り組みに関する国別報告の提出を求めるのが柱。核共有や核抑止の再考を促す記述は、核保有国や「核の傘」に依存する日本などの反発を受け削除していた。
9日は午前の討議を非公開にして採択の可能性を模索。複数の外交筋によると、報告内容をどこまで具体的に記述するかで意見が噴出し、集約できなかったという。
NPTは約190カ国・地域が加盟。核軍縮や核不拡散の方策を話し合う5年に1度の再検討会議は過去2回続けて決裂した。26年の次回は4月27日~5月22日に国連本部であり、ベトナムから議長を選ぶ。
(2025年5月11日朝刊掲載)
[NPT準備委] 本会議 異例の非公開 各国折り合わず幕切れ 国別報告に意見噴出
NPT準備委 勧告採択できず閉幕【解説】保有国の主体性乏しく
アジュマン議長(ガーナ)は閉会あいさつで「再検討会議に全会一致の勧告を届けられないという流れを断ち切れず残念だ」と述べた。
再検討会議のたたき台となる勧告案は、核兵器の「先制不使用」政策を保有国に促し、核兵器禁止条約を「核兵器のない世界に向けた貢献に留意する」と評価。兵器用核分裂性物質の生産モラトリアム(一時停止)にも触れていた。
ただ、米国は先制不使用の記述の削除を求め、英国は禁止条約の記述に反発。これに対し、禁止条約を推進するオーストリアはNPTとの補完性に言及するよう要求していた。勧告案は全会一致ではなく「議長による勧告」と位置付け直し、合意に基づかない作業文書として記録に残す。
アジュマン議長が重視したNPT体制の強化に関する決定事項案も採択できなかった。「再検討プロセスの強化」と題し、核保有国に核戦力や核軍縮の取り組みに関する国別報告の提出を求めるのが柱。核共有や核抑止の再考を促す記述は、核保有国や「核の傘」に依存する日本などの反発を受け削除していた。
9日は午前の討議を非公開にして採択の可能性を模索。複数の外交筋によると、報告内容をどこまで具体的に記述するかで意見が噴出し、集約できなかったという。
NPTは約190カ国・地域が加盟。核軍縮や核不拡散の方策を話し合う5年に1度の再検討会議は過去2回続けて決裂した。26年の次回は4月27日~5月22日に国連本部であり、ベトナムから議長を選ぶ。
(2025年5月11日朝刊掲載)
[NPT準備委] 本会議 異例の非公開 各国折り合わず幕切れ 国別報告に意見噴出
NPT準備委 勧告採択できず閉幕【解説】保有国の主体性乏しく