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工事再開は不透明 上関原発埋め立て 山口県の許可 条件付き

 中国電力上関原発(山口県上関町)の公有水面埋め立て免許の延長を山口県が許可した3日、中電幹部には「建設計画が一歩前進した」との受け止めが広がった。だが、山口県の許可には条件が付いており、実際に埋め立て工事が再開できるのかは不透明である。(河野揚)

 条件とは、原発本体の着工見通しがつくまで埋め立て工事をしないということだ。ただ、県は「本体着工見通し」の定義を明確に示さなかった。

 東京電力福島第1原発の事故を受け、政府が「原発の新増設は考えていない」という方針を示す中、中電が本体着工見通しを早期に提示するのは難しい。埋め立て工事を再開するには、少なくとも政府が原発の新設容認を明言する必要があるとみられる。国の方針が今のままであれば、埋め立て免許の期限が切れ、再び延長を申請せざるを得なくなる可能性もある。

 仮に埋め立て工事を再開できたとしても、中電は原子力規制委員会に発電所本体の適合性審査を再申請しなければならない。2009年に原子炉設置許可を経済産業省に申請したが、福島の原発事故を受け、政府が新規制基準を施行したためだ。

 現実には、中電は今、島根原発2号機(松江市)の審査に人員を割いており、上関の審査に向けて準備をする余裕はない。清水希茂社長は「島根1号機の廃止を踏まえると、上関の開発はこれまで以上に重要」と繰り返す。しかし、上関原発の行方は何より国の政策いかんにかかっている。

(2016年8月4日朝刊掲載)

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