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連載・特集

緑地帯 山本真治 広島ゆかりの作曲家たち②

 「〽セブン、セブン~」で知られる「ウルトラセブン」の作曲家冬木透さん。広島県ゆかりの作曲家をインターネットで検索していて、エリザベト短大(現エリザベト音楽大)の1期卒と知った。それから間もない2013年1月、ピアニスト小山実稚恵さんと会食した際にたまたま冬木さんの話をすると、「友人が教え子よ」。早速、連絡先を教えてもらい、雪が降る寒い日に東京でお会いした。

 冬木さんは満州(現中国東北部)に生まれ、戦後、母の故郷である広島県千代田町(現北広島町)に身を寄せた。八重高(現千代田高)で合唱部を作り、音楽に夢中になった。1952年、エリザベト短大に入学。在学中、地元のノートルダム清心中・高の校歌を作曲している。

 2014年9月、広島市西区民文化センターで広島ウインドオーケストラによる交響詩「ウルトラセブン」の演奏を企画した。曲の至るところにフルートなど楽器のソロ演奏が入る。冬木さんに「なぜソロが多いのか」と尋ねると、ニヤッと笑い「奏者がうれしくなって気分よく演奏してくれるんだ」。アンコールでは自らウルトラセブンの歌を指揮した。観客の中には子ども時代を思い出したのか、むせび泣く人もいた。

 冬木さんは唱歌「故郷」が嫌いだった。自分の生まれた故郷は「なくなった」と考えていたからだ。だが、コンサートには同級生や親戚が訪ねてきた。奏者の多くはエリザベトの後輩だった。冬木さんは「広島を思うと胸が温かくなる。これが故郷か」とうれしそうに語った。(広島市東区民文化センター館長=広島市)

(2021年4月9日朝刊掲載)

緑地帯 山本真治 広島ゆかりの作曲家たち①

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