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サーローさん映画 広島で再上映 全国公開17日から プロデューサー 竹内道さんに聞く

 核兵器廃絶を世界に訴えるカナダ在住の被爆者サーロー節子さん(89)の歩みを追った映画「ヒロシマへの誓い サーロー節子とともに」が、16日から八丁座(広島市中区)で再上映される。1月22日に核兵器禁止条約が発効した際、サーローさんたちが歓喜するシーンを新たに加えた。今月17日から全国公開も始まる。

 条約発効日に八丁座で封切られると、満席が続くなど大きな反響があった。再上映に合わせて今回、条約発効日のオーストラリアやドイツの市民の表情、サーローさんの肉声を収めた1分45秒の映像を追加。84分作品に再編集した。

 八丁座や東京・ユーロスペースなど全国5館は17日、カナダのサーローさん、プロデューサー竹内道さんと米国在住の監督スーザン・ストリックラー監督をテレビ会議システムで結び、舞台あいさつを同時中継する。(新山京子)

プロデューサー 竹内道さんに聞く

高齢者や若者 広がる客層

 映画「ヒロシマへの誓い サーロー節子とともに」のプロデューサーで米ニューヨーク在住の竹内道さん(65)は、広島市出身の被爆2世。全国公開を控え、このほど一時帰国した。新型コロナウイルス感染対策で自主隔離中に、テレビ会議システムを通して作品への思いを聞いた。(金崎由美)

  ―広島で先行上映した1~2月の反響は。
 高齢者だけでなく若者も目立ち、涙を流す人も少なくなかったという。客層の広がりを感じた。核兵器廃絶を求める不屈の姿とともに、古里広島や夫を思う等身大の日常に触れ、それぞれが自分の人生と重ねたのかもしれない。

  ―核兵器禁止条約の発効というタイミングでした。
 10年ほど前に被爆体験証言の通訳を人づてに頼まれ、広島女学院中高の大先輩であるサーローさんと出会った。その人間性に引かれ、撮影を始めた。2017年に核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN(アイキャン))を代表してサーローさんがノーベル平和賞を受賞し、今年は条約が発効。結果としてタイムリーな作品になった。

  ―サーローさんに背を押されながら、旧広島赤十字病院の初代院長だった祖父や母の被爆体験を知ろうと行動する竹内さんの姿も映し出しています。
 サーローさんを通して、被爆2世としての自らを意識するようになっていった。力強い訴えぶりが印象的な人だが、相手の声に耳を傾けて対話する、素晴らしい「聞き役」でもある。被爆体験とともに、ソーシャルワーカーという専門的な職業で培った姿勢が反核運動の基であることも、映画から読み取れると思う。

  ―核兵器の問題への関心度が違う広島県外での上映に、不安はないですか。
 米国でも手応えを得ている。この作品はまさにヒロシマのストーリー。同時に、女性やマイノリティーなど多様な人の集まりが持つパワーを感じてもらいたい。ICANの活動を引っ張る人たちは、非白人や性的少数者が多い。米国にいる私に代わって広島での上映実現に奔走してくれたのも、学校の同窓会の女性たちが中心だ。

  ―コロナ禍で世界が一変した中での公開です。
 昨年来、私たちにとっての「安全」の意味は根底から崩された。「誰かが被害を受けても、自分には決して起こらない問題」などない、と。無差別に被害をもたらす核兵器の問題も、決して人ごとではない。

 米国では既に50万人以上が新型コロナで死亡し、厳しいロックダウン(都市封鎖)を強いられた。ただ、ニューヨーク市民にワクチンが行き渡るのも間近だろう。私も2回の接種を終えて帰国できた。17日の舞台あいさつはオンラインになるが、日本入国後からの自主隔離を終え次第、多くの人と共感を直接分かち合えることを願う。

たけうち・みち
 千葉県生まれ。広島女学院高、米ワグナー大卒。大手広告代理店を経て、米国に進出した日本企業のビジネス展開を支援する「アークメディア」社を経営。ニューヨーク在住。

(2021年4月13日朝刊掲載)

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