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連載・特集

緑地帯 山本真治 広島ゆかりの作曲家たち③

 テレビアニメ「ちびまる子ちゃん」の音楽を担当する広島市中区出身の作曲家中村暢之さんには、2015年の被爆70年に向けて「ヒロシマ」をテーマとした2曲を書き下ろしていただいた。

 その2年前、作曲家の冬木透さんにバイオリニストの小林美恵さんのための新曲を依頼していた。本番の3カ月前に東京でお会いして尋ねると、「実は弦楽器は得意ではない。歌なら作曲する」と言われ、困り果てた。小林さんの演奏会は新曲が売りだ。どうしようかと頭を巡らしていると、広島の合唱指揮者・益田遙さんから観音高校時代の教え子が「ちびまる子ちゃん」の音楽を作っている―と聞いたことを思い出した。

 急きょ高田馬場駅でお会いした中村さんは180センチを超える大柄で、顎ひげを蓄えたおしゃれな方だった。事情を話し、バイオリンの新曲を引き受けていただくことになった。「ほかにどんなコンサートをするの」と聞かれたので、翌年7月にオペラ歌手錦織健さんのコンサートを計画していると答えると、「懐かしいなぁ。若い頃に一緒に遊び、仕事もした。健ちゃんなら曲を書くよ」と言われるではないか。すぐに錦織さんのマネジャーに連絡すると「普段はどんな曲か分からないので新曲はお断りしているが、中村先生なら喜んで歌わせてください」との返事。二つの新曲が決まった。

 東京の宿泊先に帰ってテレビをつけると「ちびまる子ちゃん」が放送されていた。13年9月8日。その日は東京オリンピックの「開催決定」ニュースで祝福ムードにあふれていた。(広島市東区民文化センター館長=広島市)

(2021年4月10日朝刊掲載)

緑地帯 山本真治 広島ゆかりの作曲家たち①

緑地帯 山本真治 広島ゆかりの作曲家たち②

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緑地帯 山本真治 広島ゆかりの作曲家たち⑧

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