×

連載・特集

緑地帯 山本真治 広島ゆかりの作曲家たち⑧

 3月27日、広島市東区民文化センターで「アーサー・ビナードが語る紙芝居『ちっちゃい こえ』&ヒロシマのこころコンサート」を開催した。被爆70~75年にあたる2015~20年にかけて、広島ゆかりの作曲家・作家7人に委嘱した曲の数々が、広島の音楽家12人の協演によって披露された。

 プログラムの冒頭を飾った「ひろしまへ」(14年)は、広島市出身の作曲家中村暢之さんと、詩人のアーサー・ビナードさんの共同作業によって生まれた。

 中村さんと共作してもらう作詞家を探していた当時、出版された写真絵本「さがしています」(童心社)を読み、原爆資料館の収蔵遺品が行方の分からなくなった持ち主に語り掛ける内容に心を打たれた。早速、著者のビナードさんの講演会を聞きに行き、この本を書くために広島に移住したことを知った。「この人だ」と思った。

 「広島の川はどんな時も見守って…」と書かれた歌詞は、戦前から戦後の広島の風景を優しい言葉遣いでつづり、被爆地ヒロシマを表現している。ビナードさんは、「ヒロシマを知ってもらう」ことを考え続けている人だと思う。

 27日のコンサートでは「さがしています」のアンサーソングとなる、広島市出身の作曲家・高嶋圭子さんが作曲した「さがしても」が初演された。ビナードさんは自作の絵本や紙芝居を朗読後、「平和のために一人一人できることがある」と400人の観客に呼び掛けた。

 これからも音楽を通じて、平和のためにできることをさがし続けたい。(広島市東区民文化センター館長=広島市)=おわり

(2021年4月17日朝刊掲載)

緑地帯 山本真治 広島ゆかりの作曲家たち①

緑地帯 山本真治 広島ゆかりの作曲家たち②

緑地帯 山本真治 広島ゆかりの作曲家たち③

緑地帯 山本真治 広島ゆかりの作曲家たち④

緑地帯 山本真治 広島ゆかりの作曲家たち⑤

緑地帯 山本真治 広島ゆかりの作曲家たち⑥

緑地帯 山本真治 広島ゆかりの作曲家たち⑦

年別アーカイブ