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連載・特集

緑地帯 四国五郎先生と私 ガタロ <1>

 反戦、反核、平和への思いを、誰にでも分かりやすい画風で描き続け、昨年89歳で亡くなった画家・四国五郎さん(以下敬称略)。ことし4月、広島市中区の旧日本銀行広島支店で「四国五郎追悼・回顧展」が開かれた。私も含め、四国が好きでやれん有志の手で。

 会期は12日間と短かったが5千人もの人々が集まった。会場で涙する人も多かった。平素はおよそ美術とは無縁ともいえる人たちが「いま一度四国に、優しいまなざしに会いたい」「平和を思う志に触れたい」と駆け付けたのだ。既存の美術館ではついぞ見ることのないような光景がそこには存在した。この空気感は一体何だろう。人が感動することは何であろう。美術や文化とは一体何であろうか。あらためて考えさせられた。

 本展には800名が呼び掛け人や賛同者に名を連ねた。1980年代に四国と出会い、敬愛してきた私自身、終始高揚感もあって、どうしても人ごととして見ることができなかった。

 会場の関係もあり、「母子像」を中心に据えたが、これらは四国五郎の作品のほんの一部である。生前、四国はスケッチ魔ともいえるほど眼前にあるものなら風景、人物などとあらゆるものを描くことを習い性としていた。

 私は四国に聞いた。「これまで何枚ぐらい広島をスケッチしたのか」と。四国は平然と「ムスウ…」と即答した。私は辻々に立ち、常に現場の風や人々の息吹に触れてスケッチする「土着の四国」が好きでたまらんのである。(清掃員画家=広島市)

(2015年7月28日朝刊掲載)

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