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NPT会議 再び決裂 露、ウクライナ原発記述に反発 最終文書 採択できず

核兵器廃絶遠のく

 米ニューヨークの国連本部で開かれていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議は最終日の26日、核軍縮や不拡散の今後の方策を盛り込んだ最終文書を採択できず決裂し、閉幕した。ロシアのウクライナ侵攻に伴う国際社会の対立関係が持ち込まれ、ロシアが反対を表明した。核の脅威が高まる中、2015年の前回に続く決裂で、NPT体制を大きく揺るがし核兵器廃絶が遠のく事態となった。次回の再検討会議は26年に決まった。(ニューヨーク発 小林可奈)

 決裂した全体会合で、発言を求めたロシアの代表は、最終文書案の一部について「政治的だ」と修正を求めたが実現せず、合意に至らないと説明した。

 ロシアの名指しを避けたにもかかわらず、占拠するウクライナ南部ザポロジエ原発の管理をウクライナに戻すよう促す記述などに反発したとみられる。スラウビネン議長(アルゼンチン)が午後3時の開始予定を4時間以上延ばし、ロシアなどと合意点を探る交渉を続けたが、翻意できなかったという。

 フランスは全体会合で日本や欧米、ウクライナとの共同声明を読み上げ「ロシアはウクライナ侵攻で核不拡散体制やNPTの存在意義を揺るがしている」と批判。日本をはじめ各国も続々と、失望を表明した。スラウビネン議長は記者会見し、合意に至らなかった背景にウクライナ侵攻があると総括した。

 通常5年に1度ある会議は、新型コロナウイルスの流行で延び、7年ぶりに今月1日に開幕。日本の歴代首相で初めて出席した岸田文雄首相は演説で「核兵器のない世界」へ「現実的な歩み」を主張。被爆者も核兵器を廃絶する責任を訴えた。ただ、ウクライナ情勢を巡る核兵器保有五大国間の対立のほか、核兵器禁止条約を推進する非保有国と保有国の溝も深く、合意形成は難航していた。

 採択できなかった最終文書案では、核兵器廃絶が核兵器の使用や威嚇に対する「絶対的保障」と強調。保有国が非保有国を核攻撃しない「消極的安全保障」に法的拘束力を持たせる交渉の必要性を挙げた。核兵器の非人道性に触れ、核兵器禁止条約について発効などの事実関係を示した。一方、交渉の過程で保有国による「先制不使用」宣言の採用を削除するなど核軍縮の内容は大幅に後退した。

 次の再検討会議を前に23年にオーストリア・ウィーン、24年にスイス・ジュネーブ、25年にニューヨークで準備委員会が開かれる。

(2022年8月28日朝刊掲載)

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