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[NPT再検討会議2022] 決裂 落胆と憤り 被爆者「人類が不幸になる」 若者「廃絶へ同世代連携」

 米ニューヨークの国連本部で1日から開かれていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議が、最終文書を採択できず決裂に終わったのを受け、広島の被爆者や核兵器廃絶を訴える市民団体のメンバーたちは27日、落胆と憤りの声を上げた。被爆地が願う核兵器廃絶へ、さらなる訴えと行動を誓った。(明知隼二)

 ロシアによるウクライナ侵攻が進む中で開かれた再検討会議。広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(80)は「合意は難しいと言われてはいたが、やはり残念だ」と落胆した。再検討会議は2回連続で最終文書をまとめられず、核軍縮へ一層の逆風となる。「世界で一番怖いのは核兵器なのに、なぜなくそうという議論にならないのか。このままでは人類が不幸になってしまう」と嘆いた。

 会議では、ロシアが占拠しているウクライナ南部ザポロジエ原発を巡る記述が決裂の要因となった。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(77)は「核軍縮を議論する場のはずなのに、納得がいかない」と悔しがる。会議に合わせて渡米し、現地の集会で証言もした。「核兵器廃絶を願う被爆者の気持ちが届かない。日本政府も、廃絶に向けもっと踏み込んだ役割を果たしてほしかった」

 老いる被爆者の思いを受け継ぐように、今回の会議では次代の人材も発信した。核兵器廃絶を目指す若者グループ「ノーニュークストーキョー」共同代表の慶応大4年高橋悠太さん(21)=福山市出身=は会議に非政府組織(NGO)枠で参加し、各国の若者と意見を交わした。「文書がまとまらなかったこと以上に、議論の過程で加盟国同士の分断が深まったように見える点に危機感がある。同世代で連携し、廃絶へ政治家も巻き込む動きをつくりたい」と前を向いた。

 国際社会では遅々として進まない核軍縮を受け、核兵器保有国に不満を持つ非保有国と、NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))が連携し、2017年に核兵器禁止条約の制定につなげた経緯がある。

 ICANの川崎哲(あきら)国際運営委員(53)は、最終文書案に反対したロシアの責任を指摘しつつ「核兵器の先制不使用に関する記述の削除など、他の保有国の傲慢(ごうまん)さも目立った。NPTだけでは廃絶は達成できないと明らかになった」と保有国の行動を批判。その上で核兵器禁止条約の加盟国を増やす必要性に言及し、「核兵器を許さないという圧倒的な国際世論をつくる必要がある」と訴えた。

(2022年8月28日朝刊掲載)

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