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大江健三郎さん死去 ヒロシマも悼む ノーベル文学賞講演英訳の友人 山内久明・東京大名誉教授(広島市出身)

「時代の偉大な代弁者」

 「若い時から広島に関心を持ち続け、1945年から今に至る時代の偉大な代弁者でした」。大江健三郎さんの訃報を受け、大学時代からの友人で94年のノーベル文学賞の受賞講演「あいまいな日本の私」を英訳した広島市出身の英文学者、山内久明・東京大名誉教授(88)=東京=は13日、足跡をたたえた。

 山内さんは広島市内の高校を卒業後、進学した東京大で愛媛県出身の大江さんと出会った。「海を隔てた地方者同士の親近感があって」。自作の詩を読ませてもらい親交を深めた。被爆者で父を原爆で亡くしており、65年の著書「ヒロシマ・ノート」に登場。「僕は大学でひとりの広島出身の友人をもっていたが、かれは四年間、ただ一度も、原爆についてかたることがなかった」と記されている。

 それでも、広島・長崎の原爆被害に触れた大江さんのノーベル文学賞の受賞講演の英訳を頼まれた。「日本人だけではなく、朝鮮半島出身者の被害に触れたあたりに若い頃からの関心がよく出ていたと思います。英訳を任せてくれたのは、名誉です」。今年1月末に88歳の誕生日を迎えた大江さんへ、手紙を出しそびれたのを悔やむ。(編集委員・水川恭輔)



(2023年3月14日朝刊掲載)

大江健三郎さんを悼む 被爆地の人々に導かれ

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