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核の危機 改善願う 米大使 広島を訪問 被爆者ら「行動で示して」

 ロシアのウクライナ侵攻で核使用の可能性が指摘される中、初めて広島を訪れた米国のラーム・エマニュエル駐日大使。ウクライナ情勢を受け一度は見送りになった広島訪問を希望して実現し、岸田文雄首相たちと原爆資料館(広島市中区)を見学した。広島の被爆者や迎えた関係者は、訪問が核兵器廃絶へとつながるよう期待した。(明知隼二、下高充生)

 資料館を案内した滝川卓男館長によると、現職米大統領として初めて2016年に広島を訪れたオバマ元大統領が作った折り鶴のほか、被爆者を収容した救護所の写真、屋外作業に動員された中学生の犠牲を伝える展示などを熱心に見ていたという。

 大使は見学後、「広島の教訓は、戦争のない平和な世界への道標となる北極星でなければならない」と記帳。報道陣の取材に「感情がこみ上げ言葉が見つからなかった。資料館で見た、子どもたちの私たちを見る目のイメージが脳裏から離れない」と感想を語った。

 海外からの要人への証言経験が多い被爆者の梶本淑子さん(91)=西区=は「原爆投下国でいろいろな意見があるだろうがよく来てくれた」と訪問を評価した。「亡くなった子どもの服などを見て何も思わない人はいない。バイデン大統領にも伝えてほしい」と、オバマ氏に続く現職米大統領の訪問に期待した。

 「本当に被爆の惨状を自分のこととして受け止められたか。行動で示してほしい」。元資料館長の被爆者原田浩さん(82)=安佐南区=は、そう注文した。オバマ氏が広島訪問後、核兵器廃絶への目立った成果を上げられなかったと指摘し「厳しい国際情勢だからこそ、具体的な取り組みを」と求めた。

 この日、岸田氏と対談した若者の一人で、4月から大学に進む細川綾子さん(19)=同=は「影響力のある大使が広島訪問の感想を発信してほしい」と特に若い世代への発信を望んだ。

(2022年3月27日朝刊掲載)

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