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米大使、広島で献花 大統領被爆地訪問に言及 首相同行

 米国のラーム・エマニュエル駐日大使は26日、岸田文雄首相(広島1区)と広島市中区の平和記念公園を訪れ、原爆慰霊碑に献花した。米オバマ元大統領の「核兵器のない世界」の理念を引き継ぎ、バイデン大統領と太いパイプを持つとされる。首相らとの会談ではウクライナ侵攻を続けるロシアを非難し、「世界に平和と正義をもたらさなければならない」と強調。バイデン氏が今後、被爆地訪問の意向を示す可能性にも言及した。

 エマニュエル氏は早期の広島訪問を希望した。慰霊碑への献花に先立って首相や湯崎英彦広島県知事、松井一実広島市長らと原爆資料館を回り、被爆の惨状を伝える展示を見学。オバマ氏が訪問時に贈った折り鶴も熱心に見た。松井市長と原爆ドームも視察した。

 首相や岸田内閣で核軍縮・不拡散問題を担う寺田稔首相補佐官(広島5区)との会談では、ロシアのウクライナ侵攻を「不法な戦争」と断じ、プーチン大統領による核兵器使用の威嚇を批判。「広島ほど平和に関与する上で重要な場所はない」などと語った。

 エマニュエル氏は現職米大統領として初めて広島を訪れたオバマ氏の下で首席補佐官を務め、当時副大統領だったバイデン氏の信頼も厚い。今春が取り沙汰される大統領来日に合わせた被爆地訪問については「広島、長崎のどちらかには行かせていただきたいと(バイデン氏が)言うと思う」と期待感を表明。松井市長は「ぜひ来てほしい」と望んだ。

 一方、会談で首相は「ロシアによる核兵器の使用が懸念されている。核兵器の使用は絶対にあってはならない」と強調。世界の政治リーダーたちを広島に招いて年内に開く「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」についても意見を交わした。会談後、日本が米国の「核の傘」の下にいることについて報道陣に問われると「国民の命と暮らしを守るために現実的な対応もしなければならない。核なき世界を目指す理想と矛盾しない」と述べた。(樋口浩二、小林可奈)

エマニュエル米大使 主なやりとり

 広島市を26日に訪問した米国のエマニュエル駐日大使は原爆慰霊碑(中区)に献花後、報道陣の取材に応じた。主なやりとりは次の通り。

  ―なぜ被爆地広島を訪れたいと強く思っていたのですか。原爆資料館や原爆ドームを視察した受け止めは。

 大使として、ユダヤ人である私個人として答えたい。父と母の教え、価値観を考えると、広島に来ないことは考えられない。私の旅は広島で終わらず(もう一つの被爆地である)長崎も訪れなければならない。

 本心を申し上げると、原爆資料館は、一回の訪問だけでは、そのメッセージをのみ込むことができない。それでも資料館に来ることは大使として重要なことだった。資料館で見た子どもたちの目。私たちを見ている目のイメージが脳裏から離れない。資料館を見学して感情的にならない人はいないのではないか。

 日米両国が友人として協力することで、お互いに大事にしている子どもの将来について素晴らしい未来をつくりだすことができる。

 ―広島、長崎の両市長が両市を訪れるようバイデン大統領に求めています。バイデン大統領に被爆地訪問を促す考えは。

 バイデン大統領が日本を訪れた際、広島、長崎のどちらかには行かせていただきたいと言うと思う。また、私には両市長から与えられた宿題がある。平和首長会議(会長・松井一実広島市長)の加盟国を増やすことだ。多くの米国の市長が加盟している。(エマニュエル氏が前市長だった)シカゴもその一つ。全米市長会に連絡を取って加盟を増やしていこうと思う。加盟都市を増やすだけでなく、平和のために行動することを促そうと考えている。

 ―ロシアが侵攻したウクライナの情勢については。

 私も米国の大使館に対し、ウクライナの避難民を受け入れるように言った。私はユダヤ人として傍観者ではいられない。第2次世界大戦以降では最悪の人道的な危機が起きている。

(2022年3月27日朝刊掲載)

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