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[核兵器禁止条約 第1回締約国会議] 保有国の関与 どう実現 被爆国の行動 世界が注視

 23日に閉幕した核兵器禁止条約の第1回締約国会議。史上初めて核兵器の開発、保有、使用、使用の威嚇を禁じた条約について、実効性を高めるため各国政府の代表者たちが意見を交わした。核兵器廃絶へ踏み出したことは大きな成果だが、核兵器保有国とその同盟国をどう引き込むかや、核拡散防止条約(NPT)を含む既存の核軍縮体制との連携をどう進めるかなど多くの課題も残る。最終日に採択した「行動計画」はその課題解決に向けた指針ともなっているが、日本の関与は見通せない。(小林可奈 ウィーン発)

 会議の最終日となった23日、議長を務めたオーストリア外務省のクメント軍縮局長が、50項目に及ぶ行動計画の採択を告げると、会場は喜びの拍手に包まれた。日本から参加した被爆者や非政府組織(NGO)のメンバーたちに笑顔が広がった。

NPTと「補完」

 行動計画は、禁止条約への署名・批准を拡大させることを目標に掲げた。禁止条約に核兵器保有国は一カ国も加盟しておらず、米露中仏英の5カ国に保有を限定して認めるNPTとの整合性が疑問視されてきたことなどが背景にある。

 保有国は、禁止条約を「核兵器保有国と非保有国の溝を深め、NPT体制を害する」などとして反発してきた。行動計画はこの点に留意し、禁止条約とNPTは核軍縮に向けて「補完」し合うものだと位置付けた。禁止条約とNPTの協力関係を探るため、非公式に調整する役割の「ファシリテーター」を任命することも定めた。

 核兵器の被害者支援と環境修復では、核兵器を使用し、核実験をしながら条約に加盟していない国との情報交換を進めるとした。実験などで被害を受けている国々に対する国際的な信託基金の実現可能性も議論すると明記した。

「橋渡し役」自認

 日本には被爆者援護や被爆医療など核兵器による被害に関する知見がある。政府はNPTに加盟し、保有国と非保有国との「橋渡し役」を自認してきた。しかし、「保有国が一カ国も参加していない」などとして条約を批准せず、会議へのオブザーバー参加も見送った。行動計画が定めたファシリテーターは「日本こそ適役」との声もあるが、会議にその姿はなかった。

 「橋渡しがうそでないならば、非保有国との協調を図ってほしい」。禁止条約制定に尽力したNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))の川崎哲(あきら)国際運営委員は閉幕後に指摘した。

 クメント氏は閉会のあいさつで「核兵器を巡り国際社会に間違った流れがあるが、私たちは正しい方向に向かっている。道は用意された」と3日間の会議の意義をあらためて強調した。被爆国の日本の行動を世界が注視している。

(2022年6月25日朝刊掲載)

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