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[NPT再検討会議2022] 「核軍縮へ決意示せた」 官房長官 首相演説の意義強調

 松野博一官房長官は2日の記者会見で、核拡散防止条約(NPT)再検討会議での岸田文雄首相の演説について「(核軍縮に向け)日本の強いコミットメント(関与)と、核兵器のない世界に向けた決意や具体的な取り組みを国際社会に示せた」と述べた。

 核軍縮を巡る各国の隔たりに危機感を示した松野氏は、最終文書の採択に向けては「会議の状況は極めて厳しい」と指摘。「意義ある成果を収めるため、関係国と連携して、全締約国の建設的な対応を呼びかけたいと考えている」とした。

 岸信夫防衛相はこの日の閣議後会見で首相の演説を評価しながらも、中国や北朝鮮を念頭に「軍事力のさらなる強化や軍事活動の活発化が顕著だ」と指摘。「日米安保体制の下、米国の核や通常戦力を含めた抑止力で、わが国の安全を確保していくことが重要だ」と改めて訴えた。

 立憲民主党は首相演説を「会議の合意形成に直接貢献するようなインパクトはなかった」と評するコメントを発表。核兵器禁止条約の発効に触れなかったことも批判した。(中川雅晴、口元惇矢)

行動計画「具体性乏しい」 被爆地訪問基金創設は評価

岸田首相演説巡り専門家

 岸田文雄首相が核拡散防止条約(NPT)再検討会議の演説で提唱した行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」について、専門家は「具体的な取り組みが少なく、核軍縮や廃絶に向けたリーダーシップが見えない」と批評した。一方、世界の若者に被爆地訪問を促すため国連基金を創設することは「核の非人道性の理解につながる」と評価する声が上がった。

 長崎大の鈴木達治郎教授(核軍縮・不拡散)は、演説は核兵器不使用など核軍縮の重要な論点に言及したが「多くは政府がこれまで言ってきたことで無難だ。影響力はない」との見方を示す。

 「主に理念であり『アクション・プラン』とは言えない」と述べ、抑止力の役割を減らす「先制不使用」への支持や、朝鮮半島の非核化に向けた外交強化を盛り込むべきだったと主張。日本が反対する核兵器禁止条約に触れなくても、核の被害者支援など条約が重視する政策への協力は表明できたはずだと指摘した。

 川野徳幸広島大平和センター長も「唯一の戦争被爆国の首相が国連でメッセージを発した点は意義があるが、停滞した議論をいかに動かすかの具体策は語られていない」と冷静にみる。

 被爆地訪問などを通して核廃絶に取り組む次世代を育成する方針を示した点については「きのこ雲の下で何があったのかを実際に見て感じてもらうことは深い理解につながる」と歓迎。ただ「被爆地を訪れる人が増えるにつれ、なぜ日本は核禁止条約に参加しないのかへの問いに、より丁寧な説明が求められるようになる」とも指摘した。

 アクション・プランは①核兵器不使用の継続②核戦力の透明性向上③核兵器数減少傾向の継続④不拡散と平和的利用の促進⑤被爆の実相の認識を世界で共有―の5本柱で構成する。

(2022年8月3日朝刊掲載)

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