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[NPT再検討会議2022] 首相国連演説 核禁条約 言及なかった 廃絶の思い 感じられず

被爆者ら不満 出席は評価も

 米ニューヨークの国連本部で1日にあった核拡散防止条約(NPT)再検討会議での岸田文雄首相の演説を巡り、被爆者や平和団体のメンバーは、原爆の惨禍にも核兵器禁止条約にも触れなかった内容に物足りなさを募らせた。日本の首相として初めて出席し、「核兵器のない世界」の追求を国際社会に訴えた姿勢を評価する声はあった。

 国連本部の議場の傍聴席には、各地から駆け付けた広島の関係者たちの姿があった。岸田首相の遠縁に当たるカナダ在住の被爆者サーロー節子さん(90)もその一人。傍聴後に記者会見し「聞こえは良かったが、どこまで被爆者のことを考えているのか分からなかった」と批判。禁止条約への言及がなかったのを疑問視し「米国に追従する政策では、いつまでたっても首相の求める世界は来ない」と厳しい言葉を並べた。

 「ヒバクシャ」という言葉がなかったのを嘆いたのは広島県被団協の佐久間邦彦理事長(77)。再検討会議に合わせて渡米し、被爆体験の証言を重ねているだけに「私たちの思いが通じていない。核兵器廃絶の方向へ向かっていると演説から感じられなかった」。

 やはり傍聴した核兵器廃絶を目指す若者グループ「ノーニュークストーキョー」共同代表の高橋悠太さん(21)=福山市出身=も「核兵器の非人道性をもっと強調し、核兵器のない世界へ国際社会の連帯をアピールしてほしかった」と残念がった。

 日本時間の2日未明となった演説。広島でも被爆者たちが首相の言動を追った。「被爆地選出の首相自らが出席した点は良かった」と語ったのは、日本被団協の箕牧(みまき)智之代表委員(80)。「日本政府は核兵器保有国と非保有国の橋渡し役を強調してきた。行動で示せるか、世界が注目している」と強調した。

 約11分間の演説では世界の若者の被爆地訪問を促す国連基金の創設など前向きな提案もあった。「核政策を知りたい広島若者有権者の会」(カクワカ広島)の瀬戸麻由さん(31)は「基金に期待したい。訪問者が地元の人と学び合い、核兵器廃絶へ具体的に何ができるかを考えられる内容にしてほしい」と望んだ。

(2022年8月3日朝刊掲載)

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