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連載・特集

緑地帯 語り継ぐ一人として 村田くみ <8>

 「カウンターの向こうの8月6日」は反響を呼び、今年の広島本大賞を受賞した。4月の授賞式には、冨恵洋次郎さんの代わりにHIPPYさんと私が登壇させてもらった。そこで、冨恵さんの「不言実行」の人柄を伝えた。

 その時、被爆者の人生だけでなく、冨恵さんの人生も語り継いでいけたら、と思った。この本には壁にぶち当たった時、道を切り開いていくヒントが託されていると思っている。

 私は東京にいても、被爆者の話を聞く機会があれば参加するようになった。チラシをもらって江戸川区の被爆者団体「親江会」が毎年開催している「戦争展」に出かけたのは昨年9月。そこで会長の奥田豊治さんに、「広島でやっているような会をここでもやりたいですね」と話した。区内の中葛西にある滝野公園には、1981年に建てられた原爆犠牲者追悼碑がある。「原爆の図」の作者、丸木位里・俊夫妻が被爆者や市民と共に手掛けた。

 その丸木夫妻も訪れたことがあるという同区のレストラン伊太利庵の店主、伊藤知徳さんの協力を得て、4月から毎月第3土曜の午後、「原爆語り部のカフェ」を始めた。親江会の被爆者たちが歩んできた人生、会の歴史を語り継ぎたいと思っている。

 被爆者は全国にいて各地に被爆者団体があり、活動が盛んな地域もある。<それぞれの地域で「証言者の会」が始まったら、すごい世界ができる>と本につづられていたのを思い出した。冨恵さんがまいた種は、全国で芽吹き始めている。(週刊誌記者=東京都)=おわり

(2018年8月7日朝刊掲載)

緑地帯 語り継ぐ一人として 村田くみ <1>

緑地帯 語り継ぐ一人として 村田くみ <2>

緑地帯 語り継ぐ一人として 村田くみ <3>

緑地帯 語り継ぐ一人として 村田くみ <4>

緑地帯 語り継ぐ一人として 村田くみ <5>

緑地帯 語り継ぐ一人として 村田くみ <6>

緑地帯 語り継ぐ一人として 村田くみ <7>

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