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核兵器廃絶「存在感を」 広島 被爆者ら期待・注文

 自民党の岸田文雄新総裁選出を受け、被爆地広島の被爆者や市民からは期待と注文が相次いだ。  「被爆地選出の首相として核兵器廃絶に向けて存在感を示してほしい」。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(79)は期待を膨らませた。

 岸田氏は外相在任時、原爆を投下した米国の現職大統領として初めて実現したオバマ氏の広島訪問を進めた。一方で、日本政府が2017年3月からの核兵器禁止条約制定交渉への不参加を決めた際は被爆者たちの落胆が岸田氏へも向けられた。条約は今年1月に発効したが、日本政府は米国の「核の傘」が安全保障に不可欠として背を向ける。

 国内外で被爆体験を証言してきた被爆者の田中稔子さん(82)=東区=は「決断力と実行力を発揮してほしい」と強調。来年3月に予定される禁止条約の締約国会議は批准前でもオブザーバーとして出席できるため、会議への参加を求めた。

 総裁選で「聞く力」をアピールした岸田氏。広島の若者たちでつくる「核政策を知りたい広島若者有権者の会」(カクワカ広島)の発起人の安彦恵里香さん(42)=中区=は「市民の声を聞く力があるとは思えない」と疑問視する。広島選出・出身の国会議員に核政策への姿勢を問う活動を重ねるが、岸田氏には面会を断られ続けているという。

 条約批准には「核の傘」に頼らない安全保障の構築が不可欠。市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)」の森滝春子共同代表(82)は「米国の抑止力に頼る政策の転換は容易ではないだろうが、広島の声を代表する責任に応えて」。批准への具体的な道筋を示すよう求める。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(76)は「黒い雨」の被害者救済も迫る。「黒い雨」訴訟で、原告84人全員への被爆者健康手帳交付を命じた7月の広島高裁判決が確定。国は原告と同じような状況にあった人の救済を検討する考えを示したが、具体的な制度の中身は見えてこない。「指導力を発揮し、一日も早い救済を」と訴えた。(水川恭輔、明知隼二、小林可奈)

(2021年9月30日朝刊掲載)

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